
アフリカ神話って、実はめちゃくちゃバラエティ豊かなんです。なにせアフリカは50を超える国と、数千の民族や言語が存在する大陸。ギリシャ神話みたいな「ひとつのまとまった物語世界」はなくて、地域や民族ごとにまったく違う神話体系があるのが面白いところなんですよね。
でもその中には、「おお、これはカッコいい」「ちょっと怖いけど気になる」「日本の神話と似てる…?」みたいなキャラもたくさん登場します。ここではそんなアフリカ神話に出てくる女神・英雄・怪物たちを、地域ごとにざっくりと紹介していきます。
ナイジェリアを中心に広がるヨルバ民族の神話は、アフリカの中でも特に体系的で、豊富な神々が登場するのが特徴です。ここでは神々のことを「オリシャ(Orisha)」と呼び、世界の創造や自然の力、人間の感情をつかさどる存在として信仰されています。
オシュン(Oshun)はその中でも有名な女神で、美しさ・愛・豊穣・川を司る存在。とても優しくて魅力的な女神だけど、怒らせると災いをもたらすこともあるという“慈愛と怒りの両面”を持っているのがポイント。実は今もブラジルやキューバの宗教(カンドンブレ、サンテリア)にも影響を与えていて、ヨルバ神話は世界的にも広がりを見せてるんです。
シャンゴ(Shango)は雷と戦いの神。雷の音は彼の太鼓と言われ、怒ると稲妻で敵を打ち倒すという、まさに戦神の風格です。
バントゥ系民族に伝わる神話は、地方ごとに語り方が違うんですが、「人間の祖先」や「自然と精霊の関係」をテーマにした物語が多いです。
ルウァンダ神話に登場する英雄ンディ(Ndi)は、悪しき巨人や怪物を倒す伝説の戦士。村の人々を守るために命をかけて戦う姿が語り継がれていて、日本の昔話に出てくる“鬼退治”とちょっと似た雰囲気があります。
また、バントゥ神話では動物や精霊が人間と同じくらい大事な存在として描かれます。人に姿を変えたり、夢の中で導いたりすることも多く、神と自然と人の境目がとてもゆるやかなんです。
南アフリカのカラハリ砂漠周辺に住むサン人(ブッシュマン)は、狩猟採集文化を持つ民族で、世界最古級の神話体系を残しています。文字は持たないけれど、口承で語り継がれてきた物語の中には、宇宙の起源や星の動き、死と再生のテーマがたくさん込められています。
ここで重要なのがカグン(Kaggen)というトリックスター神。カグンはクモやカブトムシなどさまざまな姿に変身し、いたずらや混乱を起こしながらも、世界を形作っていく存在。善でも悪でもなく、混沌の中に秩序を作っていくその立ち回りは、他の神話の「ロキ」や「スサノオ」にも通じるものがあります。
エチオピアは特異な存在で、アフリカで唯一“植民地化されなかった”国としても有名です。その神話や伝承もまた、独特な特徴を持っています。
特に有名なのがクイーン・マケダ(シバの女王)。旧約聖書にも登場し、ソロモン王との間に息子をもうけたという伝説があります。この息子が後のエチオピア皇帝メネリク1世とされ、エチオピア皇室の“神話的な正統性”を裏付ける物語になっているんですね。
神話と歴史、宗教(キリスト教)と王権がこんなに密接に絡み合ってる例は、アフリカの中でもかなりレアです。
アフリカの神話には、英雄や女神だけじゃなく、ちょっとゾッとするような怪物や、不可思議な精霊たちもたくさん登場します。
たとえば「アディゼ(Adze)」は西アフリカ・トーゴなどに伝わる吸血精霊で、普段は蛍の姿をしていて、人に取り憑くと悪夢や病気をもたらすとされます。しかも体に乗り移って他人を呪わせるというタイプの存在で、ちょっとホラー系なんですよね。
また「ンカンガ(Nkanga)」という精霊は、人の善悪のバランスを測る“裁きの精霊”として登場したり、「水の中に住む巨大ワニの神」みたいな自然神も数多く語られています。
アフリカ神話には、「世界をどう捉えるか」という根本の問いへの答えが詰まっています。女神や英雄はもちろん、怪物や精霊もただのファンタジーじゃなくて、人々の生活や死生観、自然への畏れと共に生きている存在。こういう物語に触れると、神話って単なる“昔話”じゃなくて、文化そのものなんだな〜と感じます。