ナミビアとはどんな国?「岩絵の国」の特徴と成り立ち
このページでは、「岩絵の国」として知られるナミビアのツワフブ渓谷などに残る先史時代の岩絵遺産、乾燥した砂漠地帯と自然の多様性、ドイツと南アフリカによる植民地支配の歴史、独立への歩み、多民族国家としての文化の広がり、そして観光や鉱業を中心とした現代の経済を通じて、ナミビアという国の成り立ちと特徴をわかりやすく解説しています。

ナミビアとはどんな国?「岩絵の国」の特徴と成り立ち

ナミビアの国旗

青は空と海、赤は国民と独立闘争、緑は農業、白は平和、太陽は生命とエネルギーを象徴する

 

ナミビアの場所

南部アフリカに位置し、西は大西洋に面し、北にアンゴラとザンビア、東にボツワナ、南に南アフリカ共和国と接する

 

基本情報
正式名称 ナミビア共和国
首都 ウィントフック
面積 約82.6万平方キロメートル
人口 約260万人(2024年推定)
公用語 英語
通貨 ナミビア・ドル(NAD)
地理 南部アフリカに位置し、大西洋に面する。ナミブ砂漠とカラハリ砂漠に覆われた乾燥地帯。
歴史 1990年に南アフリカから独立。旧ドイツ領であり、その影響が残る。
経済 鉱業(ダイヤモンド、ウラン)と観光が主力。農業従事者も多く、格差の解消が課題。
文化 多民族国家で、先住民文化と西洋文化が融合。自然保護意識が高い国としても知られる。
国際関係 アフリカ連合、南部アフリカ開発共同体(SADC)加盟国。

 

ナミビア」って聞くと、まず何が思い浮かびますか?多くの人がイメージするのは、たぶん真っ赤な砂漠、まっすぐな道、夜空の星――そう、まさに“地球とは思えない景色”が広がる国。でも実は、ナミビアって自然の美しさだけじゃなく、重たい植民地の歴史、多民族社会の共存、そして持続可能な観光と資源開発など、いろんな顔を持ってるんです。ここではそんなナミビアを、「歴史・社会・文化・地理」の視点からご紹介します。

 

 

どんな歴史?

ナミビアの歴史は、サン人(ブッシュマン)などの狩猟採集民から始まります。その後、バントゥ系民族(ヘレロ、オバンボなど)が移住してきて、独自の文化を築いてきました。

 

19世紀後半にはドイツの植民地(ドイツ領南西アフリカ)となり、1904年〜1908年にはヘレロ族・ナマ族の大量虐殺というドイツ植民地支配の暗黒時代を経験。これは今で言う「ジェノサイド」にあたる出来事で、ナミビアにとってもドイツにとっても歴史の大きな傷跡となっています。

 

第一次世界大戦後は南アフリカによる委任統治となり、アパルトヘイト政策が強制されるなど長期にわたる抑圧が続きます。そして長い独立闘争を経て、1990年にようやく独立。初代大統領サム・ヌジョマのもとで平和的な民主国家としてのスタートを切りました。

 

どんな社会?

ナミビアは人口約250万人とアフリカの中では少なめ。でもその分、広大な土地に少ない人口が散らばって暮らしているので、「人より動物の方が多い」なんて言われることもあるんです。

 

政治|SWAPO一党優位の安定と課題

大統領制の共和制で、選挙も比較的公正に行われています。独立以来、与党SWAPO(南西アフリカ人民機構)が政権を握り続けていますが、複数政党制が整っていて、野党も徐々に力をつけています。報道の自由や司法の独立も比較的しっかりしていて、アフリカでも優等生のひとつとされています。

 

経済|鉱業と観光が映す格差と持続可能性

鉱業(ダイヤモンド、ウラン、銅)が経済の柱。でも、その一方で格差や失業率の高さが問題となっています。観光も大きな収入源で、サファリ、砂漠、星空ツーリズムなどが世界中から注目されています。エコツーリズムと資源開発のバランスを模索する姿勢も好評価を得ています。

 

宗教|教会が支える教育と伝統信仰の共演

キリスト教(ルター派)が多数派で、これはドイツ植民地時代の影響。宗教的には比較的穏やかで、教会が教育や医療など地域コミュニティに密着しています。一方、サン人などの伝統的な信仰も今なお生きていて、精霊や自然とのつながりを大切にする文化も残っています。

 

言語|英語教育と地域言語が共存する多言語社会

公用語は英語ですが、日常ではアフリカーンス語、ドイツ語、オシワンボ語、ナマ語など多言語社会。学校教育は英語中心ですが、家庭では地域の母語が使われるケースが多く、言葉の使い分けが当たり前の感覚になっています。

 

 

どんな文化?

ナミビアの文化は、遊牧民、農耕民、ヨーロッパ系、アフリカ系が入り混じった複合的な文化。静かで控えめだけど、芯のある美しさと誇りを感じるような文化が息づいています。

 

美術|岩絵から手工芸まで息づく自然美

サン人の岩絵(ロックアート)はユネスコ世界遺産にも登録されていて、動物や人間が躍動的に描かれた壁画が有名です。現代では、木工芸、ビーズアクセサリー、皮製品などの手工芸が観光客にも人気。自然の素材を使ったシンプルで力強いデザインが特徴です。

 

スポーツ|サッカーとラグビーが育む共同体精神

サッカーとラグビーが人気で、ラグビーは南アフリカとの関係もあって伝統があります。オリンピック陸上(特に短距離)でもメダリストを輩出。スポーツは教育や地域活動の一部としても大切にされていて、若者の成長の場として重要視されています。

 

食事|ブライとパンが彩る肉中心食文化

ナミビア料理は肉が中心!牛、羊、鶏、時には野生動物(ゲームミート)も。バーベキュー文化(ブライ)が浸透していて、みんなで外で焼いて食べるのが定番スタイル。トウモロコシの練り物「マイリ・パップ」や、ドイツ風のソーセージ・パンも日常的です。

 

建築|植民地建築と伝統住居の共存景観

都市部にはドイツ植民地時代のヨーロッパ風建築が今も残っていて、首都ウィントフックでは教会や街並みにドイツ語の看板が出ているのも不思議な感じ。一方で、地方では伝統的な泥と木の家が使われ続けていて、気候と暮らしに合わせた造りになっています。

 

 

どんな地理?

ナミビアはアフリカ南西部に位置し、大西洋に面した広大な国土を持ちます。地理的にはアフリカでもっとも乾燥した国のひとつですが、その乾いた大地が逆に美しく、観光や研究のフィールドとしても人気です。

 

地形|砂漠と高原が織りなすドラマティック風景

ナミブ砂漠、カラハリ砂漠、中央高原、スケルトンコーストといった地形が連なり、まさに壮大な地球のジオラマ。中でもナミブ砂漠の「デッドフレイ(死の谷)」は、赤い砂と黒い枯木のコントラストで知られる絶景スポットです。

 

気候|砂漠気候の厳しさと快適さの両面

砂漠気候とステップ気候が中心で、日中は暑く夜は冷えるという典型的な乾燥地帯。年間降水量はかなり少なく、干ばつの影響を受けやすい一方で、気候は安定していて過ごしやすいとも言えます。

 

自然|絶景と野生が響きあう保護区の魅力

ナミビアには野生動物が豊富に生息していて、エトーシャ国立公園ではゾウ、ライオン、サイ、キリンなどが見られます。世界有数の星空観測地としても有名で、環境保護と観光のバランスをとる政策がしっかりしているのもポイントです。

 

ナミビアは、静かで奥深く、どこまでも広がるような国。美しい自然の陰に、重たい歴史や人々のたくましさがあって、知れば知るほど“ただの砂漠の国”じゃないってことが分かってきます。