
エスワティニの国旗
盾と槍は防衛を、青は平和、赤は過去の戦い、黄は資源の豊かさを象徴している
エスワティニの場所
南部アフリカに位置し、南アフリカとモザンビークに囲まれた内陸国
旧称 | スワジランド(2018年に改称) |
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正式名称 | エスワティニ王国 |
首都 | ムババネ(行政)、ロバンバ(王室・立法) |
面積 | 約1.73万平方キロメートル |
人口 | 約120万人(2024年推定) |
公用語 | 英語、スワティ語 |
通貨 | リランゲニ(SZL)、南アフリカ・ランド(ZAR) |
地理 | 南アフリカとモザンビークに挟まれた内陸国。山岳、丘陵、平野がバランスよく分布。 |
歴史 | 1968年にイギリスから独立。現存する数少ないアフリカの君主制国家。 |
経済 | 農業と製造業が中心。南アフリカとの経済的結びつきが強い。失業率やHIV感染率が高い。 |
文化 | スワジ族の伝統を重視。伝統舞踊「ウンクルラ」が有名。 |
国際関係 | アフリカ連合加盟国。イギリスと歴史的関係あり。 |
「エスワティニ」って国名、最近初めて聞いたという人もいるかもしれません。以前はスワジランドという名前で知られていたこの国は、アフリカ南部に位置する王国で、2018年に正式に現在の名称へと改められました。南アフリカとモザンビークに挟まれた小さな国ながら、伝統文化と王政が今も色濃く残る、アフリカの中でもちょっとユニークな存在なんです。この記事では、そんなエスワティニの歴史・社会・文化・地理の側面から、その知られざる魅力を紹介していきます。
エスワティニの歴史は、先住民のバントゥー系民族の定住から始まり、19世紀にはスワジ王国が形成されて現在の国のかたちができました。特にムスワティ2世の時代に王国としての勢力が拡大し、その名が現在の国名「エスワティニ(スワジ人の国)」の由来にもなっています。
19世紀末になるとイギリスの保護領となり、独立運動を経て1968年に独立。その後も王政を維持したまま現代に至るという、アフリカではかなり珍しいケースです。
2018年、現国王のムスワティ3世は、スワジランドという国名を植民地時代の名残として否定し、「エスワティニ」に変更すると発表しました。これは国のアイデンティティを再確認する大きな象徴的出来事だったんですね。
エスワティニの社会は、アフリカの中でも伝統文化と近代制度が共存する特異なスタイルをとっています。都市部と農村部では生活様式がかなり異なり、伝統的な価値観が今も強く根づいています。
エスワティニはアフリカ最後の絶対君主制として知られており、国王ムスワティ3世が政治の多くを握っています。議会はあるものの、政党は事実上禁止されていて、国王が首相を指名し、法や政策の最終決定権も持っています。これに対して民主化を求める市民運動も起きており、国内外で政治的自由の制限が問題視されている状況です。
経済は南アフリカとの結びつきが非常に強く、実際のところ南ア経済圏に組み込まれているような構造になっています。主な産業は砂糖・木材・繊維などの農業と軽工業で、南アからの投資や貿易に大きく依存しています。また、観光業も外貨獲得源のひとつですが、インフラ整備の遅れや政治情勢の影響で安定性には課題があります。
国民の多くはキリスト教(特にシオン派)を信仰していますが、伝統的な宗教や儀式も今なお大切にされています。たとえば祖先崇拝や自然の霊を敬う文化が根強く、これらは日々の暮らしや王室行事にも影響を与えています。宗教と王権の結びつきも強く、国王が「国家と神の仲介者」とされる伝統的な思想が残っています。
公用語はスワジ語(シスワティ語)と英語です。スワジ語は日常会話から公式行事、学校教育まで幅広く使われており、民族のアイデンティティを象徴する言葉とされています。英語はビジネスや政府文書に使われ、外国とのやりとりでは不可欠な言語です。
エスワティニの文化はとにかく伝統が生きていることが魅力。王族や儀式を中心に、民族衣装、踊り、音楽が日常生活としっかり結びついていて、「昔の文化が今も続いている国」として世界的にも注目されています。
伝統的なビーズ細工や木彫り、織物などが有名で、特にスワジ民族の模様をあしらった布は儀式やお祭りでよく使われます。また、王族を題材にした絵画や壁画もあり、文化的誇りが表現されています。観光地では、これらの工芸品が土産物としても人気です。
エスワティニではサッカーが最も人気のあるスポーツで、国内リーグや代表戦も大いに盛り上がります。農村部では伝統的な競技やダンスも今なお行われていて、運動がコミュニティの絆を深める場にもなっています。スポーツイベントも国王が関わることがあり、国家的なイベントとしての意味合いもあります。
食文化は素朴で栄養重視。主食はシマ(トウモロコシ粉の練り物)で、これに豆、野菜、肉の煮込みを組み合わせて食べるのが基本スタイル。サツマイモやカボチャもよく食べられ、祭りの時期には伝統酒や特別な肉料理が振る舞われることもあります。
都市部ではコンクリート造りの建物が増えてきていますが、農村には今も伝統的な丸型の泥とワラの家(ビーハイブハット)が並びます。これは通気性と断熱性を兼ね備えた構造で、気候に合った理にかなったつくりなんです。王宮や伝統的な集会所にはスワジ文化特有の建築様式が残されていて、国の象徴にもなっています。
エスワティニはアフリカ大陸の中でも特に小さな国で、面積は四国よりもやや広い程度。でも、その中に山、高原、谷、森林、草原と、ぎゅっと濃縮された自然が詰まっているのが特徴です。
国土は西から東へなだらかに低くなっていく地形で、西部は山岳地帯(ハイヴェルド)、中央部は高原、東部は平地の低湿地帯(ローヴェルド)になっています。この地形の違いが、農業・気候・暮らし方にも大きく影響しています。
標高差があるため、地域ごとに気候がかなり違うのがエスワティニの特徴。西部は涼しく雨が多いのに対して、東部は高温で乾燥しています。全体的には温暖で過ごしやすい亜熱帯気候ですが、雨季(夏)と乾季(冬)がはっきりしていて、農業や生活のリズムもこの季節に合わせて動いています。
野生動物の保護区や自然公園が多く、エコツーリズムにも力が入れられています。特にムリルワネ野生動物保護区やハラネ自然保護区では、サイ、シマウマ、インパラなど多くの動物に出会えるチャンスがあります。自然と共生する暮らしが、今でも人々の間に根づいているんです。
エスワティニは、アフリカの中でもひときわ伝統と現代がはっきりと共存している国です。王族の存在、祭りの熱気、穏やかな自然――小さな国に詰まった大きな魅力を、これからもっと多くの人が発見していくはずです。