
チュニジアの国旗
赤は独立と殉教者の血、白は平和、三日月と星はイスラムと国の統一を象徴している
チュニジアの場所
北アフリカに位置し、北と東は地中海に面し、西にアルジェリア、南東にリビアと接する
正式名称 | チュニジア共和国 |
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首都 | チュニス |
面積 | 約16.4万平方キロメートル |
人口 | 約1,250万人(2024年推定) |
公用語 | アラビア語 |
通貨 | チュニジア・ディナール(TND) |
地理 | 北アフリカに位置し、地中海に面する。温暖な気候と肥沃な平野を持つ。 |
歴史 | 1956年にフランスから独立。アラブの春の発祥国であり、民主化の象徴とされた。 |
経済 | 観光業と農業(オリーブ・デーツ)が主力。政治の混乱により経済成長は不安定。 |
文化 | アラブ・地中海・ベルベル文化が融合。世界遺産も多数(カルタゴ遺跡など)。 |
国際関係 | アラブ連盟、アフリカ連合、地中海連合のメンバー。 |
「チュニジア」は、アフリカの北端――地中海に面した“小さな大国”。名前だけ聞くとあまりなじみがないかもしれませんが、じつはこの国、古代ローマやアラブ、フランスの文化がギュッと詰まった歴史の交差点なんです。そして現代では、「アラブの春」発祥の地としても世界の注目を浴びました。そんなチュニジアを「歴史・社会・文化・地理」の視点からのぞいてみましょう。
チュニジアの歴史は古代カルタゴから始まります。紀元前9世紀にフェニキア人によって築かれたカルタゴは、ローマと戦ったハンニバルで有名ですよね。紀元前146年、カルタゴはローマに滅ぼされますが、その後ローマ帝国の一大拠点として栄え、円形闘技場や浴場跡などが今も残っています。
7世紀以降はアラブのイスラム勢力に支配され、文化や宗教が大きく変化。その後、オスマン帝国の影響を経て、1881年にはフランスの保護領に。1956年に独立し、長くブルギーバ大統領による近代化政策が進められました。
そして2011年、「アラブの春」がこの地から始まり、独裁を打倒して民主化へ大きな一歩を踏み出しました。中東・北アフリカ地域の中では比較的安定した民主主義が続いています。
チュニジアはアラブ・地中海・アフリカの3つの要素が融合した独特の社会を持っています。教育水準が高く、女性の社会進出も進んでいる、比較的リベラルな国でもあります。
共和制国家で、過去には議会制民主主義が機能していたものの、2021年以降は大統領の権限が強まる傾向にあります。現在の大統領カイス・サイードは、反汚職を掲げつつも、議会の停止や新憲法の導入など、独裁化への懸念も出てきています。それでも、市民の政治参加意識は高く、日々の議論が活発な国です。
主な産業は観光、農業(オリーブ、デーツ)、工業(繊維、部品)。地中海に面した立地を活かし、EUとの貿易が活発です。ただし、失業率の高さや物価上昇は若者にとって大きな不満で、経済的不安定さが社会運動の火種にもなっています。
国民のほとんどがイスラム教徒(スンニ派)ですが、政教分離が明確で、宗教的に寛容な国として知られています。女性の権利や世俗的なライフスタイルも保たれていて、ラマダン中にレストランが普通に営業していることもあるくらいです。
公用語はアラビア語(チュニジア方言)ですが、フランス語も広く使われているのが特徴。教育、ビジネス、医療などではフランス語とアラビア語のバイリンガルが基本です。さらに若者の間では英語人気も上昇中で、多言語国家的な感覚が根づいています。
チュニジアの文化は、ローマ、イスラム、フランスの影響を受けつつ、地中海の穏やかさとアフリカのエネルギーを併せ持ったもの。芸術、映画、食、音楽どれをとっても個性が光っています。
モザイク文化が有名で、古代ローマ時代の床モザイクは世界的にも高く評価されています。現代アートも盛んで、社会問題をテーマにした作品が多いのが特徴。特に女性アーティストや若手の表現力が注目されています。
サッカーが圧倒的に人気。代表チームはアフリカカップ常連で、国内リーグも盛況です。他にもハンドボールやバレーボールも強く、男女ともにスポーツ参加率が高いのが特徴。都市ではヨガやジョギング文化も根づいてきています。
チュニジア料理はスパイシーで地中海風。代表的なのはクスクス(粒状のパスタ)、ブリック(卵入り揚げパイ)、ハリッサ(唐辛子ペースト)など。オリーブオイル、トマト、ニンニクをベースに、唐辛子のピリ辛アクセントが効いてます。魚介も肉料理もバランスよく登場するので、食文化はかなり多彩です。
チュニス旧市街のメディナ(世界遺産)には、細い路地、モスク、青い扉、白い壁という絵本のような風景が広がります。郊外ではベルベル人の洞窟住居や、古代遺跡のローマ円形劇場など、見ごたえのある建築が点在。近代建築と伝統建築が自然に融合しているのも魅力です。
チュニジアは、アフリカにありながらヨーロッパとの距離がものすごく近い。地中海沿岸の穏やかな風景と、内陸のサハラ砂漠の荒涼さが一国に共存するという、なんとも贅沢な地理を持っています。
北部は緑豊かな丘陵地帯、中央部は平野と山地、南部にはサハラ砂漠が広がります。塩湖(ショット・エル・ジェリド)やオアシスの村もあり、映画『スター・ウォーズ』のロケ地にもなったことで有名です。
地中海性気候で、夏は乾燥して暑く、冬は温暖で雨が降るという、まさにリゾートにぴったりな気候。南部に行くと乾燥が一気に強くなり、砂嵐が発生することもあります。
国立公園や海洋保護区もあり、バードウォッチングやトレッキングが楽しめる自然スポットが豊富。地中海沿岸ではイルカやカモメ、海の透明度が観光の目玉になっています。
チュニジアは、小さな国だけど、歴史・文化・自然・人の力がギュッと詰まった“濃い”国。中東でもアフリカでもない、でもどちらでもある――そんな独自のバランス感覚が、この国の一番の魅力なのかもしれません。