マリとはどんな国?「マリ帝国の遺産」の特徴と成り立ち
このページでは、「マリ帝国の遺産」として知られるマリのかつてサハラ交易で栄えた歴史、ティンブクトゥをはじめとする学問とイスラム文化の中心地としての役割、フランス植民地時代からの独立、内戦や政情不安を経た現代の課題、多様な民族と音楽文化の魅力を通じて、マリという国の成り立ちと特徴をわかりやすく解説しています。

マリとはどんな国?「マリ帝国の遺産」の特徴と成り立ち

マリの国旗

緑は農業と希望、黄は鉱産資源、赤は独立のために流された血を象徴している

 

マリの場所

西アフリカ内陸部に位置し、北にアルジェリア、東にニジェール、南にブルキナファソとコートジボワール、西にギニアとセネガル、北西にモーリタニアと接する

 

基本情報
正式名称 マリ共和国
首都 バマコ
面積 約124万平方キロメートル
人口 約2,200万人(2024年推定)
公用語 フランス語
通貨 CFAフラン(XOF)
地理 西アフリカ内陸国で、ニジェール川流域に位置。北部はサハラ砂漠。
歴史 古代にはマリ帝国として栄えた。1960年にフランスから独立。
経済 農牧業と金鉱が主力。政情不安と治安悪化が課題。
文化 グリオ文化や伝統音楽が有名。イスラム教が主な宗教。
国際関係 アフリカ連合、ECOWAS加盟(現在は一時停止中)。

 

マリ」って聞くと、名前は知ってるけど場所や特徴がピンとこないかもしれません。でも実はこの国、アフリカの歴史を語る上で絶対に外せない国なんです。かつては黄金の王国・マリ帝国として世界に名を轟かせ、サハラ交易、学問の都ティンブクトゥ、そして音楽文化の宝庫――と、歴史も文化もめちゃくちゃ奥深いんですよ。ここではそんなマリを、「歴史・社会・文化・地理」の視点から探ってみましょう。

 

 

どんな歴史?

マリの歴史の主役といえば、なんといってもマリ帝国(13〜16世紀)。首都ニアニを中心に、西アフリカ最大級の大帝国として栄えました。特に有名なのがマンサ・ムーサ王。彼は「世界一の富豪」とも言われた人物で、1324年のメッカ巡礼の途中に大量の金をばらまいた話は今でも語り草です。

 

その後はソンガイ帝国に引き継がれ、交易とイスラム文化の中心地として輝きましたが、16世紀末にモロッコ軍の侵攻を受けて衰退。19世紀にはフランスの植民地となり、「フランス領スーダン」として支配されます。

 

1960年に独立してからは、軍政と民政の繰り返しで政治的には不安定な時期が長く、2012年以降はイスラム過激派の台頭により治安悪化が深刻な問題となっています。

 

どんな社会?

マリの社会は多民族・多言語・多宗教のミックス。でもそれぞれの違いを乗り越えて、「村」や「家族」、「音楽」を軸にしたゆるやかな絆が広がっているんです。たとえ国家が揺れても、地域のつながりが人々の生活を支えている――そんな印象です。

 

政治|軍政下でも芽吹く市民の意志

形式的には大統領制の共和国ですが、近年はクーデターが相次いでいて、2021年以降は軍政下にあります。過激派の影響、フランス軍の撤退、国連のミッション終了なども重なって、不安定さが続いているのが現状。とはいえ、市民の政治意識や国際支援への期待も根強くあります。

 

経済|自給と金鉱が描く二面性の暮らし

農業と鉱業(特に金)が中心の経済ですが、インフラの不足と治安の悪化が大きな壁になっています。農村ではモロコシや米、綿花を栽培していて、自給自足に近い生活を送る人も多数。一方で、金鉱山での児童労働や環境破壊といった問題も深刻です。

 

宗教|スーフィズムが紡ぐ平和的共存

国民の9割以上がイスラム教徒(スンニ派)で、スーフィズム(神秘主義的イスラム)の伝統が強く、穏やかで寛容な信仰が根づいていました。ただし、近年の過激派の影響により、宗教的な多様性や自由が脅かされつつあるのも事実です。

 

言語|バンバラ語が支える多語社会

公用語はフランス語ですが、日常的にはバンバラ語(またはバマナ語)がもっとも広く使われています。他にもソンガイ語、トゥアレグ語、プル語など、多様な民族語が共存していて、言語の壁を越えたコミュニケーションの文化が育まれています。

 

 

どんな文化?

マリの文化は、とにかく“音”と“リズム”がすごい。アフリカ音楽が世界に広がる中で、マリはその心臓部とも言われてるんです。文字よりも語り部(グリオ)による口承文化が大事にされてきていて、生きた歴史が音楽とともに残っているんです。

 

美術|土と泥が育む神秘の造形

ドゴン族の仮面や彫刻は世界的にも有名で、宗教儀式や祭りに使われます。泥染め布(ボゴラン)もマリ独自の美術で、自然素材で染められた模様に意味や物語が込められています。現代アートでは政治やジェンダー問題をテーマにする作家も増えていて、表現を通じた社会批評の場としても注目されています。

 

スポーツ|夢をつなぐ草サッカー場の情熱

サッカーが国民的スポーツで、代表チーム「イーグルス」はアフリカネイションズカップでも安定した実力を持っています。若者たちは空き地でボールを蹴りながら、プロ選手になる夢を追いかけてるんです。

 

食事|団子と共に紡ぐ共有の儀式

主食はトウジンビエや米を使った団子(ト)。これにピーナッツやバオバブの葉、トマトベースのスープをかけて食べるのが一般的。家庭では手で食べるスタイルが主流で、みんなでひとつの皿を囲むことで家族のつながりを深めていきます。

 

建築|泥の大モスクが刻む歴史の脈動

マリといえば、なんといってもジェンネの大モスク。世界最大の日干しレンガの建築で、ユネスコ世界遺産にも登録されています。泥を塗りなおす年1回の修復イベントは町中の一大行事。他にも、ドゴンの断崖絶壁に建てられた村など、自然と調和した建築が多いのも魅力です。

 

 

どんな地理?

マリはアフリカ西部の内陸国で、国土は日本の約3.5倍。けれどその広さの多くがサハラ砂漠や乾燥地帯なんです。でも実は南部には緑豊かな農村や大河(ニジェール川)もあって、気候と風景のギャップがすごい国でもあるんですよ。

 

地形|砂漠と肥沃地が織りなす対比風景

北部はサハラ砂漠、南部はニジェール川流域の肥沃な平原ドゴン高原やバンディアガラの断崖など、世界的にも珍しい地形が広がっていて、自然と人が共生する空間が今も残っています。

 

気候|雨季と乾季が刻む存続のリズム

サヘル地域を含む半乾燥〜乾燥気候で、雨季(6〜9月)と乾季がはっきりしています。気候変動による干ばつや砂漠化の影響が深刻で、食料や水の安定供給が課題になっています。

 

自然|河と断崖が育む豊かな生態系

自然公園は少ないですが、ニジェール川流域にはカバや鳥類が生息していて、伝統的な漁や農耕が行われています。自然保護と伝統文化の両立が今、模索されているテーマです。

 

マリは、世界史にも登場する「黄金の国」でありながら、現代では課題と可能性が入り混じった国。でもそこに息づく音楽、物語、人々の強さは、本当に他では見られない魅力にあふれています。