レソトとはどんな国?「天空の王国」の特徴と成り立ち
このページでは、「天空の王国」として知られるレソトの標高の高い山岳地形とそれに根ざした生活文化、バソト族を中心とした王国の歴史、イギリス保護領からの独立、南アフリカに囲まれた特異な地政学的位置、多民族国家としての文化、そして農牧業と出稼ぎ経済に支えられる現代社会を通じて、レソトという国の成り立ちと特徴をわかりやすく解説しています。

レソトとはどんな国?「天空の王国」の特徴と成り立ち

レソトの国旗

青は空と雨、白は平和、緑は土地、中央のバソト帽は文化と独立の誇りを象徴している

 

レソトの場所

南部アフリカに位置し、南アフリカ共和国の国土内に完全に囲まれた内陸国

 

基本情報
正式名称 レソト王国
首都 マセル
面積 約3万平方キロメートル
人口 約220万人(2024年推定)
公用語 英語、ソト語
通貨 ロチ(LSL)、南アフリカ・ランド(ZAR)
地理 南部アフリカの内陸国で、全土が高地(平均標高1,400m以上)。南アフリカに完全に囲まれている。
歴史 1966年にイギリスから独立。立憲君主制を採用。
経済 繊維産業、水力発電、農業が中心。多くの出稼ぎ労働者が南アフリカで働いている。
文化 バソト族が主流民族。伝統衣装や音楽が継承されている。
国際関係 アフリカ連合、SADC加盟国。

 

レソト」って、名前は聞いたことがあっても、「どこにあるの?」「どんな国?」って思う方も多いかもしれません。実はレソトは、アフリカ南部に位置する“国の中にある国”なんです。地図で見るとびっくり!南アフリカ共和国にぐるりと囲まれている、まるで“ポケットの中の王国”。でもその中には、標高1000m以上の山岳地帯、伝統的な暮らし、独立への誇りがぎゅっと詰まっているんです。ここではそんなレソトを「歴史・社会・文化・地理」の視点から探っていきましょう。

 

 

どんな歴史?

レソトの歴史は、独立と自立の精神にあふれています。19世紀初頭、南アフリカでヨーロッパ人の侵略が激しくなった時代に、モショエショエ1世というリーダーが現れて、バソト族(レソトの人々)をまとめて山岳地帯に拠点を築きました。これがレソト王国の始まりです。

 

その後、オランダ系のボーア人との戦いなどで領土が縮小されていきますが、1868年にはイギリスの保護領となり、南アフリカ連邦に組み込まれるのを回避しました。そして1966年に「レソト王国」として独立を果たし、アフリカの中で数少ない立憲君主制の国として現在に至っています。

 

どんな社会?

レソト社会の大きな特徴は、伝統と近代化が共存しているところ。国全体が山の上にあるような地形の中で、人々は助け合いと自給自足の暮らしを守りつつ、都市部では教育や経済活動も発展しています。

 

政治|伝統君主制と政情不安が揺れる統治

立憲君主制で、国王(現在はレツィエ3世)は象徴的な存在。行政の実権は首相率いる議会が担っています。ただし、政党間の対立や軍の介入などによる政情不安がたびたび起こっていて、政治的安定の確立が大きな課題となっています。

 

経済|農業と出稼ぎ支える自給と依存

経済は農業、繊維産業、南アフリカへの出稼ぎ労働が中心。とうもろこしやソルガムを栽培しながら、自給的な農業をしている人も多いです。また、繊維製品はアメリカへの輸出が盛んで、アフリカ成長機会法(AGOA)の恩恵を受けています。ただし、失業率と貧困率が非常に高くHIV/AIDSの影響も社会経済に深刻な打撃を与えています。

 

宗教|教会が支える社会基盤と福祉の連携

キリスト教(特にカトリックとプロテスタント)が圧倒的多数で、日常生活の中に宗教行事や教会の役割が深く入り込んでいます。宗教は教育、医療、福祉の現場でも大きな役割を果たしていて、社会を支える基盤のひとつになっています。

 

言語|ソト×英語のバイリンガル日常

公用語はソト語と英語。ソト語(セソト)は国民のほとんどが話せる言語で、学校教育や家庭、メディアでも広く使われています。英語は公式文書や国際的な場面で使用されていて、バイリンガルな環境が当たり前になっています。

 

 

どんな文化?

レソトの文化は、山岳の暮らし、馬文化、民族衣装といった、まるで昔話のような魅力がたくさん。伝統を守りながらも、新しい文化も少しずつ受け入れている、そのバランス感覚がとても興味深いんです。

 

美術|毛織と草編みに息づく伝統美

手織りの毛布(バソトブランケット)、草で編んだ帽子(モコロアナ)、陶器やビーズ細工が伝統的な工芸品です。特に毛布文化はレソトの象徴的存在で、儀式や日常、政治的イベントでも身につけられています。

 

スポーツ|山岳地帯育む馬文化と球技熱

サッカーと馬術が人気。特に山岳地帯では馬が移動手段として欠かせないため、馬に乗る技術が子どもの頃から身につきます。馬レースのイベントもあり、地域コミュニティの重要な社交の場になっています。

 

食事|粥と煮込みが紡ぐ山里の味わい

主食はパパ(トウモロコシ粥)、米、ソルガムなど。これに野菜や豆の煮込み、時には肉料理を合わせて食べます。味付けはシンプルだけど、家庭ごとの工夫があって、ゆったりした時間と一緒に味わうのがレソト流。

 

建築|丸石家屋に宿る気候適応の知恵

農村部では丸い石造りの家(ルンダバ)が伝統的で、藁ぶきの屋根が特徴。都市部には近代的な建物もありますが、伝統的な建築は今も生活に根づいていて、気候に合った“暮らしの知恵”が詰まっています。

 

 

どんな地理?

レソトの最大の特徴はその「標高の高さ」!なんと国土全体が1000m以上の山岳地帯にある、世界で唯一の“天空の国”とも言われているんです。夏でも涼しく、冬は雪が降る場所もあります。

 

地形|天空に連なる山岳と谷の大パノラマ

山、谷、川が織りなすダイナミックな地形。中でもドラケンスバーグ山脈が国境沿いに連なり、マレツニャネ滝のような絶景スポットも。高地農業や放牧が主流で、自然と密接に結びついた生活が営まれています。

 

気候|高地性の涼と厳寒が織りなす季節感

高地性気候で、夏(10〜3月)は温暖で雨が多く、冬(6〜8月)は乾燥して寒さが厳しいです。特に夜は冷え込みが激しく、標高2000m超えの地域では雪も。気温差が大きいので、暮らしや建物の工夫が求められる環境です。

 

自然|手つかずの山岳景観と豊かな生態系

レソトは自然の宝庫!野草、山岳植物、清流、野鳥などが豊かで、トレッキングや乗馬ツアーが人気。山岳リゾートやエコツーリズムも注目されていて、手つかずの自然の中でのんびり過ごす贅沢が味わえるんです。

 

レソトは、小さくても誇り高く、山に守られながら生きてきた王国。そこには、自然との共生、伝統を守る知恵、そして未来に向けた希望がしっかり息づいています。「知らないからこそ面白い」――そんなレソトの物語、ぜひ一度触れてみてください。