
モロッコの国旗
赤は力と勇気、緑は希望とイスラム、中央の五芒星は五柱の教義と神とのつながりを象徴する
モロッコの場所
北西アフリカに位置し、北は地中海、西は大西洋に面し、東にアルジェリア、南に西サハラと接する
正式名称 | モロッコ王国 |
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首都 | ラバト |
面積 | 約71万平方キロメートル(西サハラ含まず) |
人口 | 約3,700万人(2024年推定) |
公用語 | アラビア語、ベルベル語 |
通貨 | モロッコ・ディルハム(MAD) |
地理 | 北西アフリカに位置し、大西洋と地中海に面する。アトラス山脈が国内を縦断。 |
歴史 | 1956年にフランスとスペインから独立。王政が続き、安定性を保っている。 |
経済 | 農業、観光業、鉱業が主力。欧州との経済関係が深い。 |
文化 | イスラム教が主流。アラブ、アフリカ、アンダルシア文化が融合。 |
国際関係 | アラブ連盟、アフリカ連合、イスラム協力機構加盟国。 |
「モロッコ」って聞くと、バザールの香り、タジン鍋、サハラ砂漠、青い街シャウエン……そんなエキゾチックな風景が頭に浮かびませんか?でも実はモロッコは、アラブ世界・アフリカ・ヨーロッパの3つの文化圏がぶつかり合い、溶け合った“交差点の国”。
さらに忘れてはならないのが、モロッコが属する「マグリブ」――北西アフリカのイスラム文化圏としての顔です。古代から現代に至るまで、マグリブ世界の一翼として、地中海世界とサハラ以南アフリカの間で独自の発展を遂げてきました。
政治的にも観光的にも注目度が高く、イスラム文化と近代性が共存するモロッコは、マグリブ諸国の中でもひときわユニークな存在です。ここでは、そんなモロッコを「歴史・社会・文化・地理」の視点から深掘りしていきましょう。
モロッコの歴史は、古代ベルベル王国からローマ、イスラム、そして欧州列強との駆け引きまで、ほんとうにドラマチック。北アフリカ西部、すなわち「マグリブ(西方)」と呼ばれる地域に位置するモロッコは、古来よりこのイスラム世界の西端として独自の文化と政治的影響力を築いてきました。
7世紀にはイスラム化が進み、マグリブ全体でアラブ・イスラム文化が浸透するなか、モロッコではベルベル系のイドリース朝が誕生。以降も、マグリブ世界をリードするようにムラービト朝、ムワッヒド朝、マリーン朝といった強力なイスラム王朝が相次いで興隆しました。これらの王朝は、モロッコのみならずマグリブ広域を支配し、アンダルス(イベリア半島)にまで影響を及ぼす宗教的・軍事的な勢力を形成しました。
中世にはスペインやポルトガルとの戦いもあり、モロッコはマグリブの最前線として、イスラム圏とキリスト教圏の攻防の要となりました。
1912年にはフランスとスペインによって保護領化され、カサブランカやフェズなどが欧州的に整備されていきます。マグリブ全体が列強の支配下に置かれる中、モロッコは独自の王政体制を保持したことでも特異な存在でした。
1956年にムハンマド5世のもとで独立を果たしてからは、王政を維持したままの独自の近代化路線を歩みます。現在の国王ムハンマド6世は、経済改革・女性の権利拡大・外交多角化に積極的で、国際社会からも評価されている存在です。今日でもモロッコは、マグリブ諸国の中で政治的安定と経済的発展を同時に実現する数少ない国として注目されています。
モロッコの社会は、宗教と伝統を大切にしながらも、開かれた姿勢を持つ“バランス型”。アラブ世界に属しつつも、観光客や外国文化に寛容で、地域ごとの多様性もとても豊かです。
立憲君主制の王国で、国王は軍・宗教・司法を含む広範な権限を持ちつつ、選挙で選ばれた議会と首相が行政を担います。2011年の「アラブの春」では憲法改正が行われ、政治改革と国王の象徴化が進みましたが、実質的には王政の影響力が強いのが現実です。
モロッコの経済は農業、観光、鉱業(リン鉱石)、繊維産業が柱。特に観光産業は国の顔で、マラケシュやサハラ、都市の旧市街(メディナ)を目当てに訪れる人が年々増えています。また、再生可能エネルギー(太陽光・風力)にも力を入れており、グリーン経済の先進国としての顔も。
イスラム教(スンニ派マリキ学派)が国教で、宗教は生活の中心。とはいえ、他宗教への寛容さも比較的高く、キリスト教やユダヤ教の信者も少数ながら共存しています。ラマダン(断食月)やモスクでの祈りは、町の雰囲気そのものを変えるほど大事にされています。
公用語はアラビア語とベルベル語(アマジグ語)。ただしフランス語が準公用語的に使用されており、教育、メディア、ビジネスではフランス語が多用されます。最近では英語教育にも力を入れていて、トリリンガルな若者も珍しくありません。
モロッコの文化は、アラブ、ベルベル、アフリカ、ヨーロッパが折り重なったモザイクのような美しさ。伝統と現代、宗教と芸術、静けさとエネルギーが見事に共存しているのが魅力です。
幾何学模様(ゼリージュ)、アラベスク、書道(カリグラフィー)が伝統美術の代表。建築やモスクのタイル装飾、織物、陶芸などに見られる繊細なデザインは圧巻。現代アートも盛んで、カサブランカやラバトにはアートギャラリーやフェスティバルも充実しています。
サッカーは国民的スポーツで、2022年W杯ではアフリカ勢初のベスト4進出という快挙を達成!ほかにも陸上競技、ボクシングなどで国際的に活躍する選手が多く、スポーツが若者の希望になっています。
タジン、クスクス、パスティーヤ、ハリラ(スープ)など、香辛料と甘辛のバランスが絶妙な料理が多いです。ミントティーは“モロッコのおもてなしの象徴”で、甘くて香り豊か。家庭料理もレストランも、盛り付けや彩りがとっても美しいんです。
モスク、マドラサ(神学校)、宮殿、リヤド(中庭つきの伝統家屋)など、建築美はモロッコの大きな魅力のひとつ。特にフェズやマラケシュの旧市街では、迷路のような路地に千年の歴史が息づいています。泥と石とタイルの芸術といった感じです。
モロッコはアフリカの西北端に位置し、地中海、大西洋、サハラ砂漠、アトラス山脈といった超多様な自然環境を持つ国。こんなに一国で景色が変わる場所って、世界的にも珍しいんです。
北部は地中海沿岸、中央にはアトラス山脈、南はサハラ砂漠と、変化に富んだ地形が特徴。海・山・砂漠が一度に楽しめる国として、自然派観光客からも人気です。ワルザザートやメルズーガでは映画のロケ地にもなった絶景が広がります。
地中海性気候、ステップ気候、砂漠気候が共存しており、地域によって寒暖の差が激しいです。カサブランカやラバトなどの沿岸部は過ごしやすく、観光のベストシーズンは春と秋。南部では夏の暑さがかなり厳しいです。
アトラス山脈の野生動物、サハラの星空、ダデス渓谷の奇岩など、自然も豊かで多彩。海岸線も美しく、エッサウィラやアガディールではサーフィンも人気です。近年はエコツーリズムや登山も盛んになってきています。
モロッコは、歴史・文化・自然がぜんぶ濃厚に詰まった、まるで“歩く万華鏡”みたいな国。イスラム世界に触れながら、ヨーロッパとのつながりやアフリカの風を感じられる――そんな“交差点の国”を旅してみたくなりませんか?