アフリカに伝えられる神話まとめ

アフリカ神話と聞いて、まず思い浮かぶのはおそらく「エジプト神話」でしょう。ラーやオシリス、アヌビスといった神々の名前は世界中で知られていて、まさに“神話の代名詞”のような存在になっています。でも実は、アフリカ大陸にはエジプト神話以外にも、驚くほど多様で奥深い神話体系がたくさんあるんです。

 

サハラの南には、文字を持たずに語り継がれた神話、自然と人とのつながりを描く口承伝承、そして精霊や精妙な世界観が織り交ざる物語群が広がっています。この記事では、そんな「知られざるアフリカ神話の世界」を、地域ごとにざっくりまとめてご紹介します。

 

 

エジプト神話|王と神が一体となった古代の宇宙観

言わずと知れた古代エジプト神話は、アフリカで最も有名かつ体系的な神話のひとつ。ナイル川沿いの文明の中で、太陽、死、復活をテーマにした壮大な物語が展開されました。

 

中心となるのは太陽神ラー

 

昼は太陽の船に乗って空を旅し、夜は冥界を通ってまた昇ってくるというサイクルを繰り返します。死者の神オシリスとその息子ホルスの神話では、弟セトによる兄殺し、そして息子による復讐と再生の物語が展開され、王権の正統性や死後の世界観に大きな影響を与えています。

 

エジプト神話は宗教、政治、天文学が融合した独特の世界観を持っていて、今でも多くのフィクションや学問の題材になっています。

 

ヨルバ神話|“オリシャ”と呼ばれる神々の世界

ナイジェリアを中心に展開したヨルバ民族の神話では、神々のことを「オリシャ(Orisha)」と呼び、それぞれが自然現象や感情、人間の営みを司っています。

 

オバタラは創造神で、人間を形作った存在とされます。オグンは鉄と戦いの神で、刀鍛冶や兵士の守護神。オシュンは愛と豊穣、川の女神で、優しさと怒りを兼ね備えた存在です。
こうしたオリシャたちは、アフリカだけでなく、奴隷貿易を通じてブラジルやカリブ海諸国にも広がり、現代でも「サンテリア」「カンドンブレ」などの宗教の中で信仰されています。

 

 

バントゥ神話|自然と祖先、精霊が交差する物語

バントゥ系民族に伝わる神話は、南・中央アフリカに広く分布していて、口承文化を通じて多彩な物語が語られています。中心となるのは、創造神ムワリ(Mwari)ルウング(Ruungu)といった存在。彼らは世界を創り、命の循環を支える力を持っています。

 

バントゥ神話では精霊(スピリット)の存在が非常に重要で、祖先の霊や自然の中に宿る力が人々の暮らしと密接につながっているのが特徴です。英雄や怪物の物語も豊富で、正義、勇気、知恵といった価値観がストーリーを通して伝えられています。

 

サン人神話|世界最古の神話文化の一つ

南部アフリカのサン人(ブッシュマン)による神話は、現存する最古級の口承文化とされます。彼らは狩猟採集を中心とする生活を営み、神話は自然とのつながりを反映した内容になっています。

 

カグン(Kaggen)は、トリックスター的な性格で、クモや動物に変身して世界を作ったり、破壊したりする存在。道徳や因果応報の教訓も、彼の行動を通じて伝えられています。

 

この神話体系は、自然界のすべてに霊的な意味があるという考え方が基本にあり、人と自然が一体であるという視点がとても特徴的です。

 

エチオピア神話|歴史と神話の境目が曖昧に

エチオピアでは、神話と歴史、宗教が密接に結びついています。特に有名なのがシバの女王ソロモン王の物語。旧約聖書にも登場するこの伝承では、二人の間に生まれたメネリク1世が、エチオピア王朝の始祖とされています。

 

この伝説は王権の正統性を支えるだけでなく、エチオピア正教会の成立とも深く関係していて、「歴史と神話が重なり合った国家神話」と言える存在です。

 

アフリカ神話って、実はエジプトだけじゃなく、民族ごとに全然違う物語があって、それぞれが世界観や価値観を反映しています。自然、祖先、神、精霊――どれも人々の暮らしと切り離せない存在として生きていて、「神話は文化の鏡なんだな〜」と実感します。