タンザニアとはどんな国?「動物の楽園」の特徴と成り立ち
このページでは、「動物の楽園」として知られるタンザニアのセレンゲティ国立公園やンゴロンゴロ保全地域などに代表される豊かな自然と野生動物、多民族国家としての文化の多様性、ドイツ・イギリスによる植民地支配と独立の歴史、タンガニーカとザンジバルの統合、そして観光と農業を中心とした現代の社会や経済の特徴をわかりやすく解説しています。

タンザニアとはどんな国?「動物の楽園」の特徴と成り立ち

タンザニアの国旗

緑は農業と自然、青はインド洋、黄は鉱物資源、黒は国民を象徴し、対角線で調和を表す

 

タンザニアの場所

東アフリカに位置し、東はインド洋に面し、北にケニアとウガンダ、西にルワンダ・ブルンジ・コンゴ民主共和国、南にザンビア・マラウイ・モザンビークと接する

 

基本情報
正式名称 タンザニア連合共和国
首都 ドドマ(実質的な中心はダルエスサラーム)
面積 約94.5万平方キロメートル
人口 約6,500万人(2024年推定)
公用語 スワヒリ語、英語
通貨 タンザニア・シリング(TZS)
地理 東アフリカに位置し、インド洋に面する。キリマンジャロ山、セレンゲティ国立公園、ザンジバル諸島などで知られる。
歴史 1961年にイギリスから独立(タンガニーカとザンジバルが統合)。社会主義路線を経て市場経済に移行。
経済 農業が主産業で、観光、鉱業も重要。安定した経済成長を維持。
文化 120以上の民族が共存。スワヒリ文化と音楽が国内に根付いている。
国際関係 東アフリカ共同体(EAC)やアフリカ連合に加盟。

 

タンザニア」と聞いて、何を思い浮かべますか?キリマンジャロ?セレンゲティ?それともスワヒリ語?じつはタンザニアは、アフリカの“縮図”ともいえるほど多様性に富んだ国なんです。壮大な自然だけじゃなく、独自の歴史、平和的な多民族共存、スワヒリ文化など、人の魅力も文化の深みもたっぷり。ここではそんなタンザニアを「歴史・社会・文化・地理」の視点で、わかりやすくご紹介します。

 

 

どんな歴史?

タンザニアの歴史は、東アフリカ交易の中心地として始まります。インド洋沿岸にはアラブ、ペルシャ、インドからの交易商が訪れ、スワヒリ文化が育まれていきました。ザンジバル島などは、かつて奴隷貿易と香辛料貿易の拠点として繁栄していたんです。

 

19世紀末にはドイツがタンガニーカ(本土)を、イギリスがザンジバル(島部)をそれぞれ植民地化。

 

第二次世界大戦後、独立運動が高まり、1961年にタンガニーカが独立。翌年にはザンジバルも独立し、1964年に合併して「タンザニア」が誕生しました。初代大統領ジュリウス・ニエレレは「ウジャマー(アフリカ社会主義)」という理念を掲げ、平等と民族統合を進めました。政治的には一党制から複数政党制へ移行し、現在は比較的安定した民主主義国家となっています。

 

どんな社会?

タンザニアの社会のいちばんの強みは、120以上の民族が争わずに共存していること。宗教や文化の違いを受け入れ合いながら、一体感のある国民性を育んできたんです。

 

政治|初女性大統領が率いる安定政権

大統領制の共和国で、選挙による政権交代も経験済み。現在の大統領はサミア・スルフ・ハッサンで、タンザニア初の女性大統領でもあります。報道の自由や人権問題では課題も残っていますが、クーデターなどの大きな混乱は少ない、東アフリカでも比較的安定した国です。

 

経済|多彩な資源が生む観光・鉱業経済

経済の柱は農業(コーヒー、茶、カシューナッツなど)鉱業(特に金とタンザナイト)。観光も大きな収入源で、キリマンジャロ山、セレンゲティ国立公園、ザンジバルと、観光資源がとにかく豊富。近年は港湾開発や製造業育成も進んでおり、アフリカの「新たな成長拠点」として注目されています。

 

宗教|宗教の多様性が築く寛容共存

キリスト教とイスラム教がほぼ半々で、それに伝統宗教も加わるという形。特にザンジバルではイスラム教が多数を占めていて、ラマダンや礼拝の習慣がしっかりと守られています。宗教間の衝突は基本的に少なく、寛容でバランスの取れた共存が実現されています。

 

言語|スワヒリ語が紡ぐ言語的結束

公用語はスワヒリ語と英語。スワヒリ語は東アフリカ広域で使われていますが、タンザニアは国としてスワヒリ語を本格的に教育・行政に取り入れた先駆け。そのおかげで多民族国家なのに言語的な一体感が生まれました。日常ではスワヒリ語がメインで、英語はビジネスや高等教育で使われています。

 

 

どんな文化?

タンザニアの文化は、アフリカの力強さとインド洋の柔らかさが合わさった、のびやかでリズミカルなもの。踊りたくなる音楽、心が温まる言葉、目を引くファッション、どれも魅力がぎっしりです。

 

美術|色彩と伝統が響き合う生きたアート

有名なのはティンガティンガ・アート。鮮やかな色づかいと動物モチーフが特徴で、ポップでかわいらしいのに、どこか奥深い。木彫りやビーズ細工、布(カンガやキテンゲ)などの手工芸も豊富で、アートが生活の中に息づいている感じです。

 

スポーツ|国民を一つにするスポーツ情熱

サッカーが国民的スポーツで、ダルエスサラームやアルーシャのスタジアムは常に熱狂的。長距離走でも有望選手が多く、オリンピックにも出場しています。最近では女性アスリートや障がい者スポーツの支援も少しずつ進んでいます。

 

食事|大地と海の風味が融合する家庭料理

主食はウガリ(トウモロコシ粉の練り物)ライスで、これに豆、野菜、魚、肉を組み合わせた家庭料理が定番。スパイスの効いたココナッツ風味がザンジバル地域ではよく使われていて、インド・アラブの影響も感じられる独特の風味が楽しめます。

 

建築|伝統とモダンが共存する建築景観

都市部ではコンクリート建築も増えていますが、地方では泥壁や草屋根の伝統住居が今も現役。ザンジバルではアラブ風の石造建築やスワヒリ建築が見られ、ストーンタウン(世界遺産)には迷路のような路地と彫刻が美しい木の扉が並びます。

 

 

どんな地理?

タンザニアは地理的にもバラエティ豊かで、アフリカ最高峰の山、世界最大級の湖、大草原のサファリ、インド洋の美しい島――全部この一国にあるという驚きの場所なんです。

 

地形|山岳から湖沼まで広がる多様地形

キリマンジャロ山(5895m)はアフリカ大陸最高峰で、登山家の聖地でもあります。ほかにもセレンゲティの大草原、ンゴロンゴロ・クレーター、リフトバレーと、地質学的にも観光的にも見どころ満載。湖ではビクトリア湖、タンガニーカ湖、ニャサ湖と、アフリカ三大湖が全部あるんですよ。

 

気候|標高差が織りなす気候変化

熱帯気候ですが、標高差が大きいので地域によってだいぶ違います。海岸部は蒸し暑く、山岳部は涼しくて過ごしやすい。雨季(3〜5月/11〜12月)と乾季(6〜10月)がはっきりしていて、観光は乾季がベストシーズンです。

 

自然|ビッグ5が息づく野生動物の楽園

野生動物の宝庫として世界的に有名。ライオン、ゾウ、ヒョウ、バッファロー、サイの“ビッグ5”はもちろん、ヌーの大移動、フラミンゴの群れ、バオバブの森など、まるで動物図鑑がそのまま動いてるような光景が広がります。自然保護やエコツーリズムも盛んで、観光と保全のバランスに力を入れています。

 

タンザニアは、人も自然も文化も、いろんな“ちがい”がゆったり共存する国。争わず、比べず、でもしっかり誇りを持って生きる――そんなタンザニアの空気を感じるだけで、なんだか心がほぐれる気がします。