ブルキナファソとはどんな国?「モシ王国の遺産」の特徴と成り立ち
このページでは、「モシ王国の遺産」として知られるブルキナファソの歴史的ルーツであるモシ族の王国の伝統、フランス植民地支配からの独立、政情不安とクーデターを繰り返す政治的背景、多様な民族文化と音楽・舞踊の豊かさ、そして内陸国ならではの経済課題と地域社会の取り組みを通じて、ブルキナファソという国の成り立ちと特徴をわかりやすく解説しています。

ブルキナファソとはどんな国?「モシ王国の遺産」の特徴と成り立ち

ブルキナファソの国旗

赤は革命と闘争、緑は農業と自然、中央の黄色い星は革命の導きを象徴している

 

ブルキナファソの場所

西アフリカ内陸部に位置し、北にマリ、東にニジェール、南にベナン・トーゴ・ガーナ・コートジボワールと接する

 

基本情報
正式名称 ブルキナファソ
首都 ワガドゥグ
面積 約27.4万平方キロメートル
人口 約2,200万人(2024年推定)
公用語 フランス語
通貨 CFAフラン(XOF)
地理 西アフリカ内陸部に位置する。サバンナ地帯に広がる農業国。
歴史 1960年にフランスから独立(旧称オートボルタ)。クーデターと政情不安が続く。
経済 農業と金の採掘が中心。インフラ不足と治安問題が経済成長の足かせに。
文化 多様な民族と伝統文化が共存。映画や演劇の分野でも評価が高い。
国際関係 アフリカ連合、ECOWAS加盟国。

 

ブルキナファソ」――名前に聞き覚えはあっても、「アフリカのどこ?」って思う人も多いかもしれません。でも実は、この国名は「誇り高き人々の国」って意味なんです。西アフリカ内陸部に位置し、金鉱と農業、伝統と革命、音楽とアートがぎっしり詰まった魅力あふれる国。ここでは、そんなブルキナファソを「歴史・社会・文化・地理」の視点から見ていきましょう。

 

 

どんな歴史?

ブルキナファソの地には、古代からモシ王国をはじめとする強力な国家が存在していました。モシ族は現在も最大民族で、伝統的な王政も文化の一部として残っているんです。

 

19世紀末にフランスの植民地(フランス領西アフリカ)となり、当初はオートボルタ(上ボルタ)と呼ばれていました。1960年に独立し、その後、政情不安とクーデターが続きましたが、1983年に登場したトマ・サンカラという若き大統領が国の転換点に。彼は汚職撲滅・農業改革・女性の権利拡大を掲げ、国名を「ブルキナファソ」に変更したんです(モシ語とジュラ語のミックスで「正直な人々の国」)。

 

その後サンカラは暗殺され、長期政権を経て再び軍政と民主化の揺れ戻しが続いています。2022年以降はクーデターで政権が軍に移り、現在も移行期です。

 

どんな社会?

ブルキナファソの社会は、貧しくても誇り高い、そんな言葉がぴったり。経済的には苦しくても、コミュニティの絆と助け合いがしっかりと根づいていて、教育や表現の自由に熱心な人も多いんです。

 

政治|絆と安全保障の狭間で揺れる統治

現在は軍事政権が暫定的に統治しており、民政移行の計画が立てられているところ。背景には、サヘル地域のイスラム過激派の脅威があります。これに対抗するため、国防と治安維持を重視した政策が進められていますが、一方で言論や市民活動の自由が制限されつつある状況も。

 

経済|金の産出と農業が映す格差と脆弱性

ブルキナファソは金の産出量がアフリカでも上位。鉱業は外貨獲得の主力ですが、富が国内に広く行き渡らないのが課題です。国民の多くは農業(綿花、モロコシ、トウモロコシ)で生計を立てており、天候不順や気候変動の影響も大きいです。インフォーマル経済(非公式な商売や労働)に頼る人も多いのが現実。

 

宗教|共存と緊張のはざまに息づく信仰

イスラム教(約60%)、キリスト教(約30%)、伝統宗教(約10%)がバランスよく共存しています。宗教間の共存意識が強く、混合家庭も多いのが特徴でしたが、近年は過激派による宗教施設への攻撃もあり、宗教をめぐる安全保障の課題も出てきています。

 

言語|公用語と多数民族語のはざまで紡ぐコミュニケーション

公用語はフランス語ですが、日常会話ではモシ語(モレ)をはじめとした60以上の民族語が使われています。多言語国家ですが、教育や行政におけるフランス語偏重とのギャップもあり、識字率の向上が重要課題となっています。

 

 

どんな文化?

ブルキナファソは、アートと表現に情熱を注ぐ国。西アフリカの中でも特に映画と音楽、ダンス、文学が盛んで、クリエイティブな“誇り”を育てる力にあふれています。

 

美術|社会を映す仮面と壁画の表現

木彫りや仮面、織物などの伝統工芸が豊富で、特にボボ族やセヌフォ族の仮面文化は有名。現代アートでも政治や貧困をテーマにした社会派作品が増えていて、街角アートや壁画として表現されることも多いです。

 

スポーツ|地域をつなぐエタロン魂

サッカーは国民的スポーツで、代表チーム「エタロン(馬)」はアフリカネイションズカップでも上位常連。ほかにも柔道や陸上競技も人気で、スポーツが教育や地域活動の一部として大切にされています。

 

食事|ピーナッツソースが支える温かい絆

主食はトウモロコシやモロコシを使ったト(練り物)で、これに葉物のソース、豆、干し魚や肉を添えます。ピーナッツソースやスパイスを使ったコクのある味付けが特徴。手で食べるのが一般的で、みんなで囲んで食べるのが基本スタイルです。

 

建築|住まいがキャンバスになる装飾の妙

都市ではモダンなビルも増えていますが、農村では土壁とわら屋根の伝統住居が今も使われています。バジレという地域には幾何学模様の装飾が施された壁の家々があり、“住まいがキャンバス”という文化が生きています。

 

 

どんな地理?

ブルキナファソは西アフリカ内陸部にあって、海には面していません。でもそのぶん、サバンナとサヘルの“境界線”にあるからこそ、気候も植生も文化も入り混じった独特の地理環境になってるんです。

 

地形|サバンナとサヘルが織りなす風景

全体的に標高は低く、なだらかな高原が広がっています。主要な河川はモウン川やナカンベ川などで、農業や飲料水の命綱です。森林は少ないですが、乾燥地帯と湿潤地帯の中間的な自然が見られます。

 

気候|雨季と乾季が刻む営みのリズム

熱帯サバンナ気候とサヘル気候が入り混じっていて、乾季と雨季がはっきりしています。雨季は6〜9月ごろで、雨が命を支える一方、豪雨による洪水も悩みのタネ。気候変動の影響で干ばつや雨の不安定化も深刻になってきています。

 

自然|乾燥地で息づくたくましい生態系

野生動物は減少していますが、ナジンガ国立公園などでゾウ、バッファロー、カバ、ワニなどが見られます。乾いた土地でもたくましく生きる生態系が魅力で、薬草や在来植物の知識も人々の暮らしに息づいています。

 

ブルキナファソは、経済的には厳しくても、人と文化と歴史の奥深さでは負けない国。混乱の中でも言葉とアートで生き抜く誇り高き人々が暮らしている――そのことを知るだけでも、世界の見え方がちょっと変わってくるかもしれません。