
アフリカの風景といえば、サバンナを歩くゾウやキリンが有名ですが、じつはそのそばにいつもいるのが牛。しかも、ただの牛じゃなくて、その地域ごとに適応した在来種がいて、見た目も性格もけっこうバラバラなんです。さらに、アフリカでは牛がお金代わりになったり、社会的な地位の象徴だったりすることもあるんですよ。ここでは、アフリカの牛の種類と、それを取り巻く放牧文化について紹介していきます。
アフリカにいる牛の多くは、いわゆる「高性能な家畜」というよりも、暑さ、乾燥、病気、移動に強い“サバイバル型”。だからこそ、農業用や食肉用としてだけでなく、家族の財産、信仰、文化の一部として大切にされています。
それぞれの地域や民族に特有の牛がいて、見た目も役割も少しずつ違います。以下は特に有名なアフリカ在来牛です。
ひと目見たら忘れられない、とにかく角が巨大な牛。角の長さは1m以上になることもあって、誇り・富の象徴として扱われます。ミルクの生産も可能ですが、量よりも見た目と文化的価値が重視される存在です。
背中にコブがあるのが特徴。暑さと乾燥、さらには牛の天敵であるツェツェバエが媒介する病気(アフリカトリパノソーマ症)にも比較的強いので、放牧地帯での主力品種になっています。肉とミルク、労働力の“マルチプレイヤー”。
移動型牧畜民であるフラニ族が飼育する牛。細身で足が長く、長距離の移動にも耐えるのが特徴です。フラニ族にとって牛は命そのもの。結婚の持参金や贈与、儀式に使われる重要な存在です。
マサイ族の飼う牛は、生活のど真ん中にあります。牛のミルクと血を混ぜて飲む文化や、牛を巡っての戦いや歌、踊りもあるくらい。牛=家族、牛=名誉、牛=命とまで言われています。
アフリカの多くの地域では、定住して牧草地で育てるのではなく、広大な土地を移動しながら牛を飼う「放牧文化」が主流です。これは気候が不安定で、水や草を求めて移動する必要があるからこそ生まれたライフスタイル。
特に有名なのが以下のような放牧民グループです:
放牧は、単なる「飼い方」ではなく、土地・動物・人が共に動く生活のリズムそのものなんです。
近年、アフリカの都市化や農地の拡大によって、放牧の移動ルートが狭まりつつあるという問題も出てきています。また、近代的な酪農とのバランスや、感染症・気候変動への対応も求められるように。
それでも、在来牛の強さや文化的価値は見直されていて、遺伝資源としての保護や、観光資源としての活用、さらにはアートやファッションへの展開も始まっています。
アフリカの牛は、ただの“家畜”じゃなくて、生きる・誇る・つながるための存在。角の形や歩き方、その鳴き声までもが、アフリカの大地と人々の暮らしを語ってくれるんです。