アフリカでは猿を食べるって本当?

「アフリカでは猿を食べるって本当?」――ちょっと衝撃的に聞こえるかもしれませんが、一部地域では事実です。

 

ただし、これはアフリカ全体の文化ではなく、特定の地域や状況に限られた慣習なんです。ここでは、どこで・なぜ・どのように猿(霊長類)が食べられてきたのか、そしてそこにある文化的・歴史的・現代的な背景について解説していきます。

 

 

「ブッシュミート」とは?

まず知っておきたいのが「ブッシュミート(Bushmeat)」という言葉。これは野生動物の肉全般を指す表現で、猿(チンパンジー、サル類)だけでなく、シカ、イノシシ、ハリネズミ、さらにはゾウやカバまで含まれることがあります。

 

西アフリカや中央アフリカの森林地帯では、昔から狩猟で得た肉が重要なタンパク源として食文化に組み込まれていました。つまり、猿の肉もその中の一部の選択肢だったということです。

 

どこで猿が食べられてきたの?

霊長類を食べる習慣は、主に以下のような地域で見られます:

 

  • コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国:熱帯雨林地帯で伝統的な狩猟文化が根強い
  • カメルーン、ガボン、赤道ギニア:山間部や森林地域で一部の民族が霊長類も食用にする
  • 一部の西アフリカ地域:主にサル類が市場でブッシュミートとして流通

 

ただし、これは都市部の一般的な食文化ではありません。あくまで地方や少数民族の伝統的生活圏での慣習であり、最近では法律や倫理、感染症の観点から禁止される方向に進んでいます。

 

 

なぜ猿を食べてきたの?文化と現実のはざま

猿を食べる背景には、いくつかの要因があるんです。

 

  • 森林地帯では野生動物が貴重なタンパク源(畜産が難しい地域では、狩猟が主な手段)
  • 伝統的な信仰や儀礼食としての役割(特定の動物を“霊的な力”と結びつけて食べる文化も)
  • 「貴重な肉=ごちそう」としての位置づけ(祝いの場などで出されることも)

 

つまり、猿を食べる行為自体は必ずしも“野蛮”とか“異常”なものではなく、その地域の生活と価値観に根ざしたものなんです。

 

現代では問題視されることも増えている

近年では、霊長類の捕獲と食用利用には多くの批判や懸念が寄せられています。理由は大きく3つ。

 

絶滅危惧種の保護

多くの猿や類人猿(特にチンパンジーやゴリラ)は、IUCNの絶滅危惧種に指定されています。乱獲によって生態系のバランスが崩れるリスクも高く、保護団体や政府による取り締まりが進められています。

 

感染症リスク

霊長類は人間と遺伝的に非常に近いため、ウイルスや細菌も共通するものが多いんです。たとえば:

 

  • HIV(エイズウイルス)も元々はサル由来とされています
  • エボラ出血熱は、野生動物(含む霊長類)の肉を媒介として人間に広がったとされる説も

 

このため、食文化というより公衆衛生上のリスクとして国際的にも注視されています。

 

倫理と動物愛護の視点

近年は霊長類の高い知性・社会性が科学的にも注目されていて、「人間に近い動物を食べることへの倫理的な是非」が問われるようになってきています。特に国際社会では、霊長類保護への関心が高まっているんです。

 

「アフリカ=猿を食べる」は大きな誤解にも

たしかに猿を食べる文化は存在します。でも、それは特定の地域・民族・状況に限られた話であって、アフリカ全体の姿ではありません

 

実際、多くのアフリカの人々は霊長類を保護すべき存在として認識していたり、「そんなの食べたことも見たこともないよ!」という反応をします。メディアやステレオタイプによる偏見には注意が必要です。

 

アフリカの“猿を食べる文化”は、歴史と環境に根ざしたもの。でも今は、保護、衛生、倫理といった現代の課題の中で、その在り方が大きく問われているんです。知ることが、理解の第一歩ですね。