
「天然資源がたくさんある国って、豊かでうらやましい!」と思いがちですが、アフリカの現実は必ずしもそうじゃないんです。石油、金、ダイヤモンド、コバルト……豊富な資源を持つのに、なぜか貧困、紛争、汚職、格差が深刻になる国が多い。これがいわゆる「資源の呪い(resource curse)」と呼ばれる現象です。ここでは、アフリカでなぜ資源が“呪い”になってしまうのか、そのメカニズムとそこから抜け出すためのヒントを紹介していきます。
資源の呪いとは、天然資源が豊富な国ほど経済成長が遅れたり、政治が不安定になったりする現象のこと。1980年代から経済学者たちが注目するようになり、今では世界中の資源国に共通する問題として知られています。
アフリカでは特に、アンゴラ、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、チャドなどの資源大国でこの現象が顕著に見られます。資源があるのに国がうまく発展しない――その背景には、複雑なメカニズムがあるんです。
アフリカ最大の産油国で、石油は国家収入の大半を占めています。でも、そのお金の多くがどこに使われているのかは不透明。政治家の汚職や不正が横行し、石油地帯では武装組織が誘拐や破壊活動を行うことも。豊かなはずなのに、公共サービスや教育が行き届かない現実があります。
2002年に内戦が終わり、石油の輸出で経済は一気に成長。でもその恩恵を受けているのは都市部や一部の富裕層だけで、農村部は今も貧困やインフラ不足に苦しんでいます。立派なビルが建つ首都と、道路も水もない村の落差はまさに「格差社会」の象徴です。
世界有数の鉱物資源をもつこの国は、金やダイヤモンド、コバルトの宝庫。でもその資源がある地域では、武装勢力が鉱山を支配してお金を稼ぎ、内戦が長引く要因になっています。しかも、採掘に関わる人々は劣悪な環境で働かされることも多く、資源が“希望”ではなく“混乱の火種”になってしまっているんです。
資源を輸出して外貨が大量に入ってくると、その国の通貨が高くなるんです。そうすると、輸出産業(農業・製造業など)が国際競争力を失って弱体化します。つまり、資源ばっかりで経済が偏ってしまうという現象ですね。これは「オランダ病」と呼ばれています。
資源収入は莫大なので、政府が税金を集めなくてもお金が手に入るようになります。そうすると、市民の声を聞かなくても国家運営ができちゃう→結果として独裁や汚職が横行する、という構造が生まれやすくなります。まさに「金があっても政治がダメになる」という悪循環。
資源は権力と結びついた「争いの種」にもなりやすいんです。たとえばダイヤモンドや金の産地で、反政府勢力が鉱山を支配して軍資金に使うケースも。こうした「ブラッド・ダイヤモンド」問題が有名ですね。つまり、資源が経済の柱ではなく、戦争の燃料になってしまうこともあるわけです。
「呪い」だからって諦める必要はありません。世界には、資源を活かしてうまく成長できた国もあります。アフリカでも、いくつかの改善の方向性が見えてきています。
資源から得たお金をどこに、いくら、どう使ったかをきちんと公開する。たとえばEITI(Extractive Industries Transparency Initiative)という国際的な取り組みに参加することで、政府の透明性が高まり、汚職を抑えることができます。
農業、観光、IT、製造業など、他の産業も同時に育てていく「経済の多角化」がカギ。ルワンダやガーナなどでは、スタートアップ支援やテック教育にも力を入れていて、将来の経済モデルに変化が見え始めています。
資源が取れる地域の人たちに、教育、医療、雇用などの形で利益を還元することが重要です。これによって、「奪われている」感覚から「自分たちの資源」へと意識が変わり、社会全体の安定につながります。
アフリカの資源は、使い方次第で未来の希望にも破滅の引き金にもなり得ます。実際、政治が変わることで資源が“祝福”になる例も世界にはあります(例:ボツワナのダイヤモンド活用など)。
「資源がある=豊か」ではなく、「どう使うか=未来のカギ」。アフリカにとって大切なのは、目の前の鉱石よりも、それをどう分け合い、どう育てるかという知恵と仕組みなんですね。