
アフリカと聞くと、まず自然や動物のイメージが強いかもしれませんが、言葉の世界に目を向けてみると、これまたびっくりするほど奥深いんです。
なんといってもアフリカは世界最多の言語が話される大陸。その数は2000以上!しかも、多くの人が複数の言語を自在に使い分けるというから驚きです。
ここではそんなアフリカの言語事情から、多言語社会・植民地の影響・ユニークな文字・言葉遊び・ネット言語という5つのテーマにしぼって、「へぇ〜!」と言いたくなるようなエピソードをご紹介します。
アフリカでは一人で複数の言語を話せるのが珍しくありません。
たとえばケニアでは、家では部族語(例:キクユ語)、学校では英語、街中ではスワヒリ語といった具合に、場面に応じて言語を切り替える生活が当たり前。
「バイリンガルどころか、トリリンガルやクアドリンガル(4言語)もゴロゴロいる」と聞けば、日本人の語学教育の感覚とはまるで違いますよね。
この柔軟さが、アフリカ人のコミュニケーション力の高さや国際社会での活躍にもつながっているんです。
アフリカの多くの国では、英語・フランス語・ポルトガル語といったヨーロッパ由来の言語が公用語として使われています。
これは、19世紀から20世紀にかけての植民地支配の名残。
たとえば
といった具合です。
自国に多数の民族語があるため、中立的な“外来語”を共通語に選ぶことで、国内の対立を避けようとしている側面もあります。
でも一方で、「自分の母語が国の中で軽視されてる」とアイデンティティの問題になることもあり、言語と政治は切っても切れない関係なんですね。
国名 | 公用語 | 旧宗主国 | 歴史的背景 |
---|---|---|---|
コンゴ民主共和国 | フランス語 | ベルギー | ベルギー領コンゴとして植民地化。独立後もフランス語を公用語に採用。 |
セネガル | フランス語 | フランス | フランス領西アフリカの一部。行政と教育にフランス語が根付く。 |
アンゴラ | ポルトガル語 | ポルトガル | 長期間ポルトガルの植民地。1975年に独立後も公用語として継続。 |
モザンビーク | ポルトガル語 | ポルトガル | アンゴラと同様にポルトガル支配下で教育・行政が形成された。 |
カメルーン | フランス語・英語 | フランス・イギリス | 独立前は両国の委任統治領。現在も両言語を公用語として維持。 |
ケニア | 英語 | イギリス | イギリス植民地として統治。独立後も英語が行政と教育の柱に。 |
ナミビア | 英語 | ドイツ→南ア(英連邦) | ドイツ領後、南アの委任統治下に。独立時に英語を選択。 |
ギニアビサウ | ポルトガル語 | ポルトガル | 教育制度がポルトガル語に依存していたため、独立後も継続使用。 |
コートジボワール | フランス語 | フランス | フランス語が教育・行政で深く根付いたため、そのまま公用語に。 |
ルワンダ | フランス語・英語 | ドイツ→ベルギー | 旧ベルギー領。1994年以降は英語も加わり、現在は三言語体制。 |
15世紀に書かれたゲエズ文字の『創世記』第29章11-16節の写本
出典:Public domain via Wikimedia Commonsより
アフリカは「文字がなかった大陸」と思われがちですが、実は独自に発展した文字文化もあるんです。
代表的なのがエチオピアのゲエズ文字。現在でもアムハラ語やティグリニャ語などに使われていて、教会や新聞、教科書にも登場します。
他にも、ナイジェリアのバムン文字や、リベリアのヴァイ文字など、“西洋に頼らず生まれた書き言葉”がちゃんと存在しているんです。
アフリカの書き文字は、どれもがデザイン的にも美しくて個性的! 書道やフォントの分野でも注目されはじめています。
アフリカでは、昔から言葉を巧みに操る遊び文化がありました。たとえば西アフリカのグリオ(語り部)は、即興で歴史や教訓をラップのように語る伝統があります。
それが現代では、アフリカン・ヒップホップという形で若者文化に進化。複数言語を混ぜたラップや、早口言葉の応酬など、“言葉のスポーツ”のように楽しまれています。
中には、一つの曲の中で5つ以上の言語をミックスしているアーティストも!言葉の数が多いからこそ生まれた、まさに多言語ならではの表現文化ですね。
最近では、スマホの普及とともにネット上の言葉遊びもどんどん進化していますたとえばナイジェリアでは、英語と現地語を混ぜた「ピジン英語(Pidgin English)」というスラング交じりのチャット言語が人気。
直訳すると「どのくらい遠いの?」みたいな意味に思えますが、ナイジャ・ピジンでは「元気?」「最近どう?」といったあいさつ代わりの表現です。日本語の「よう、元気してた?」に近いニュアンス。
「何が起こってるの?」という現状確認のフレーズになります。日本語で言うと「何してんの?」「最近どう?」にも近い、気軽な雑談の入り口みたいなものです。
こうした新しい言語スタイルが、SNSやメッセージアプリの中で世代や地域を超えて広まっています。
今まさに、アフリカ発の“ネット言語文化”が生まれつつあるのかもしれません。
アフリカの言語事情は、「たくさんある」だけじゃありません。その中には、生きるための知恵があり、文化の誇りがあり、新しい未来をつくる力もあります。
多言語を使い分け、植民地の歴史を乗り越え、自分たちの文字を守り、言葉で表現し続ける――そんなアフリカの“声”に、もっと耳を傾けてみたくなりませんか?