
「アフリカ美術」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?
仮面、彫刻、鮮やかな模様…なんだかミステリアスで力強い印象を持つ人も多いかもしれません。だけど実は、アフリカ美術って見た目のインパクトだけじゃなく、その背後にある“意味”や“役割”がめちゃくちゃ深いんです。
宗教、社会、歴史、日常生活──アフリカの美術は、ただ飾るためじゃなく、人々の暮らしや精神世界と直結したものなんですね。
この記事では、アフリカ美術を特徴づける5つのキーワードから、その魅力と奥行きを見ていきましょう!
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ズールーのビール壺ウカンバ(南アフリカ)
発酵ビールを供するための実用品で、表面の盛り上がった文様は身分や共同体の印を示す装飾にもなる。暮らしの道具でありながら、美術としての造形性も高い。
出典:『Black pot Ukhamba Zulu people South Africa』-Photo by Vassil/Wikimedia Commons Public domain
アフリカの美術は、飾るために作られるというより、“使うため”に作られるのが基本です。
たとえば──
こうした作品は「美術品」であると同時に、道具・信仰・権力の象徴でもあるんです。
だから、博物館に並べると「彫刻」だけど、本来は人々と一緒に“生きている”アートなんですね。
バウレの木像(コートジボワール)
頭部を大きく、肩まわりを広く、顔を左右対称に強調した意図的な抽象表現で、知恵・力強さ・バランスを象徴させる造形。写実を避けることで内面的な徳や理想美を可視化している。
出典:『Statue - Baule, Ivory Coast - Royal Museum for Central Africa - DSC06621』-Photo by Daderot/Wikimedia Commons CC0 1.0
アフリカ美術を見ていて「リアルじゃないな」と思ったこと、ありませんか?
じつはそれ、わざとなんです。アフリカの多くの伝統では、外見そっくりにすることよりも、“本質”を表すことが大切なんですね。
たとえば大きな頭は「知恵」を、広い肩は「力強さ」を、左右対称の顔は「バランスと調和」を意味していたりします。
つまりデフォルメ=美的表現+メッセージなんです。これがまた、ピカソをはじめとする西洋の現代美術に大きな影響を与えたとも言われています。
エグングンの仮面行列(ベナン)
ヨルバの祖霊崇拝で知られるエグングンは、仮面と衣装をまとった行列として現れ、生者と祖先の霊をつなぐ役割を担う。儀礼では特定の先祖の霊を象徴する仮面が登場し、共同体の記憶と結束を呼び起こす。
出典:『Benin- Egungun masquerade』-Photo by Ahmzzywilmakeit/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
アフリカの美術の中でもとくに有名なのが仮面。 でもこれ、ただの飾りじゃなくて、「神になる」「先祖とつながる」ための道具なんです。
仮面をかぶることで、その人は別の存在=精霊・祖先・神に“変身”する──だから、踊りや音楽とセットで使われることが多いんですね。
仮面は地域によって形も役割もまったく違って、ナイジェリアのヨルバ族、マリのドゴン族、コートジボワールのバウレ族など、それぞれのスタイルがあるのも魅力。
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セネガンビアの環状列石(ワッス、ガンビア)
共同墓域として築かれたと考えられる列石群で、村々が力を合わせて巨石を運び据えた集団制作の造形。多数の円環が連なる景観自体が共同体の記憶を刻むモニュメントになっている。
出典:『UNESCO Wassu Stone Circles』-Photo by Niels Broekzitter/Wikimedia Commons CC BY 2.0
アフリカ美術の多くは、個人のアーティストが自己表現のために作るというより、共同体のために作るという感覚が強いんです。
たとえば──
こうした作品は村全体の祈りや記憶を形にしたもので、作り手の名前が残らないことも珍しくありません。
そこには「みんなのためのアート」という、集団的な価値観があるんです。
ネルソン・マンデラの壁画アート
出典:Ben KerckxによるPixabayからの画像
アフリカ美術って昔の話?と思いきや、実は今も絶賛・進化中なんです。
ナイジェリア、南アフリカ、ケニア、セネガルなどでは、若いアーティストたちが、伝統と現代の表現を融合させて、世界のアートシーンでも注目されています。
たとえば──
アフリカ美術は今、伝統と現代、ローカルとグローバルの間で、豊かに変化を続けているんですね。
アフリカ美術の魅力は、形の美しさだけじゃなくて、「それがなぜ作られたか」「どんな意味をもっているか」にあります。信仰、権力、記憶、そして希望──すべてが詰まったアートだからこそ、アフリカ美術は“見る”というより“感じる”ものなんですね。
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