


スーダンの国旗
赤は独立の闘争、白は平和、黒は国民とアフリカ、緑は農業とイスラムを象徴している
スーダンの場所
北東アフリカに位置し、東に紅海、北にエジプト、西にチャド、南に中央アフリカ共和国と南スーダン、南東にエチオピアとエリトリアと接する
| 正式名称 | スーダン共和国 |
|---|---|
| 首都 | ハルツーム |
| 面積 | 約186万平方キロメートル |
| 人口 | 約4,800万人(2024年推定) |
| 公用語 | アラビア語、英語 |
| 通貨 | スーダン・ポンド(SDG) |
| 地理 | 北東アフリカに位置し、紅海に面する。ナイル川が国を縦断。 |
| 歴史 | 1956年にイギリスとエジプトの統治から独立。南北内戦を経て2011年に南スーダンが分離独立。2023年に再び軍事衝突が激化。 |
| 経済 | 石油や金などの資源が豊富。政治不安が投資や発展を妨げている。 |
| 文化 | イスラム教が主流。アフリカ的要素とアラブ文化が融合。 |
| 国際関係 | 国連やアフリカ連合の介入を受ける複雑な情勢。 |
「スーダン」は、アフリカ北東部に広がる広大な国土と、複雑な歴史と民族背景を持つ国。かつてはアフリカ最大の国土面積を誇っていたけれど、2011年の南スーダン独立で国土は分かれました。それでも、ナイル川文明の遺産から、現代の軍政と民主化運動まで、スーダンの歴史はまさにアフリカとアラブ世界の交差点。ここではそんなスーダンを「歴史・社会・文化・地理」の視点から分かりやすく紹介していきます。
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メロエのピラミッド(クシュ王国の王墓群)
古代ヌビアに栄えたクシュ王国の中心地の一つで、スーダンという国の起源を物語る考古遺産。
出典:『Meroe_pyramids_Sudan』- Photo by Dbxsoul / Wikimedia Commons CC BY 3.0より
スーダンの歴史は古代エジプト文明と深く関わりがあります。紀元前にはヌビア王国やクシュ王国が栄え、エジプトと肩を並べるほどの文明を築いていたんです。特にクシュ王朝は一時期エジプトを支配し、ナイル川沿いにはピラミッドや神殿が残っています。
19世紀以降はオスマン帝国とエジプトの支配、そしてイギリス・エジプトの二重統治が行われ、1956年に独立を果たします。しかし、その後も南北の民族・宗教の違いから長期の内戦が続き、2011年にはついに南スーダンが独立。
さらに2020年代に入ってからは軍と民間勢力の対立が激化し、クーデターや武力衝突が頻発。民主化を目指す市民運動と軍の実権掌握がぶつかり合う、非常に不安定な状況が続いています。

スーダンの首都“ハルツーム”
青ナイル川と白ナイル川の合流点に位置する都市で、高層ビルが立ち並ぶ中心部には行政と経済の中枢が集まり、都市の活力を映す。
出典:Photo by Meroe55 / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
スーダンの社会は、アラブ文化とアフリカ文化がミックスした多層的な構造。民族的にも言語的にも多様で、それが時に文化的な豊かさに、時に社会的な摩擦につながる国です。
スーダンは現在軍主導の暫定政権にあります。2019年、長年の独裁者オマル・バシール大統領が市民革命で退陣したものの、その後軍と市民勢力の対立が再燃。2023年以降はスーダン軍とRSF(即応支援部隊)という武装組織の内戦状態に陥り、首都ハルツームを含む各地で人道危機が深刻化しています。政治は完全に混迷中という状況です。
かつては石油輸出に依存していましたが、南スーダン独立により油田の大部分を失い、経済は大きく後退。現在は金やガムアラビック(アラビアゴム)、農産物が輸出の柱ですが、通貨の不安定さ、制裁、インフレなど課題が山積み。経済制裁や武力衝突の影響で、生活必需品が足りず、人道支援に頼る人々も増えています。
国民の約90%がイスラム教徒(主にスンニ派)で、北部はアラブ系ムスリム中心。かつてのバシール政権下ではイスラム法(シャリーア)が国家の法体系に組み込まれていましたが、2019年の民主化過程では世俗国家への転換も議論されました。ただし、政治混乱の影響で宗教政策も揺れ動いている状態です。
公用語はアラビア語と英語ですが、実際には70以上の民族語が使われています。北部ではアラビア語が日常語である一方、南部や西部にはヌビア語、ベジャ語、フルベ語などがあり、多言語社会の複雑さが政治や教育にも影響を与えています。
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トーブをまとうスーダン女性(コーヒー儀礼中)
家庭や儀礼の場で身につける長衣トーブの装い。暮らしと信仰が結びついた文化の象徴。
出典:Photo by Alzain Mohammed / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
スーダンの文化は、エジプトにも似たアラブ的な要素と、サブサハラ的なアフリカの多様性が入り混じったハイブリッドな魅力があります。伝統衣装、音楽、建築、そして食文化──どれも独自のスタイルを持っています。
古代ヌビアの影響を受けたピラミッドや神殿装飾が今も残っていて、考古学的にも超重要。現代美術では、政治や社会をテーマにしたポスターアートやストリートアートも盛んで、ハルツームの若者たちが表現で社会を変えようとしている姿も注目されています。
サッカーが国民的スポーツで、首都ハルツームには複数のプロクラブが存在します。国内リーグも盛り上がりを見せていましたが、現在は政情不安で大会の中断も多いです。若者にとってはスポーツが現実からの逃避と希望の象徴になっている部分もあります。
フール(そら豆の煮込み)、キスラ(発酵パン)、タアミーヤ(ファラフェル)など、アラブ+アフリカ+地中海の融合料理が特徴。スパイスは控えめで酸味や豆系が多めなのが特徴です。お茶文化もあり、濃いミントティーを砂糖たっぷりで飲むのが日常的。
伝統的には日干しレンガや藁を使った家が多く、アーチや円形の装飾が施されることも。ハルツームなどの都市部にはモスクやコロニアル様式の建築も多く残っています。最近は仮設住宅や避難民キャンプも多く、「生き延びる建築」が必要とされている現状です。
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ホワイトナイルとブルーナイルの合流点(首都ハルツーム)
サハラ縁辺の乾燥地に水をもたらす大河の合流部で、国土の地形と人の定住を方向づけてきた象徴的なランドマーク。
出典:Photo by NASA / Wikimedia Commons Public domainより
スーダンはアフリカでも屈指の広さを持ち、砂漠、山地、ナイル川流域とバリエーション豊かな地形が広がっています。
北部はサハラ砂漠、中央は乾燥地帯、南部はサバンナや湿地と、気候帯が南北で大きく変わります。中心にはナイル川が縦断しており、農業や文明の源となっています。ジェベル・マッラ山地(ダルフール)などの高地もあり、地理的にはとても多様です。
北部は超乾燥した砂漠気候で、日中は40℃を超えることも。南部は雨季と乾季がはっきりしたサバンナ気候で、農業には水の確保が命です。気候変動や干ばつ、洪水の被害も多く、生活への影響は深刻。
スーダンには大規模な国立公園や保護区もありますが、武力衝突や開発の影響で保全が難しい状況です。野生動物や鳥類は多いものの、違法狩猟や密猟のリスクも高まっています。ナイル川沿いには農耕地と共生する自然も残っています。
スーダンは、古代と現代、アラブとアフリカ、平和と闘争が複雑に絡み合う国。混乱のなかでも文化と人々の強さはしっかり根づいていて、知れば知るほど「もっと理解したい」と思わせてくれる、そんな国です。
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