南スーダンとはどんな国?「世界最年少国家」の特徴と成り立ち

南スーダンの特徴と成り立ち

このページでは、「世界最年少国家」として知られる南スーダンの2011年の独立に至るまでの長い内戦の歴史、スーダンからの分離の背景、民族と宗教の多様性、独立後も続く政情不安と和平への取り組み、そして豊かな石油資源と人々の暮らしを通じて、南スーダンという国の成り立ちと特徴をわかりやすく解説しています。

南スーダンとはどんな国?「世界最年少国家」の特徴と成り立ち

南スーダンの国旗

黒は国民、赤は闘争の血、緑は土地、青はナイル川、金の星は希望と団結を象徴している


南スーダンの場所

東中央アフリカに位置する内陸国で、北にスーダン、東にエチオピア、南にケニア・ウガンダ・コンゴ民主共和国、西に中央アフリカ共和国と接する


基本情報
正式名称 南スーダン共和国
首都 ジュバ
面積 約64万平方キロメートル
人口 約1,200万人(2024年推定)
公用語 英語
通貨 南スーダン・ポンド(SSP)
地理 東アフリカに位置し、スーダン、エチオピア、ウガンダなどと接する内陸国。白ナイル川が国土を流れる。
歴史 2011年にスーダンから独立(世界で最も新しい国)。その後、内戦や政争が続く。
経済 石油に強く依存。インフラ未整備と紛争で経済発展が遅れている。
文化 60以上の民族が共存。キリスト教が主流だが伝統宗教も多い。
国際関係 アフリカ連合、国連加盟国。


南スーダン」──世界でいちばん“若い国”として知られています。2011年にスーダンから独立したばかりのこの国には、長年の紛争を乗り越えて生まれた「新しい国」の希望と、でもまだ続く混乱や課題が、入り混じるように存在しています。アフリカの真ん中に位置する、沼地と大地の国──ここではそんな南スーダンの歴史・社会・文化・地理を、やさしく紐解いてみましょう。



どんな歴史?

包括和平合意に関するブリーフィング(2005年)

包括和平合意に関する報告会(2005年)
2005年の包括和平合意(CPA)をテーマにした米国務省の説明会の様子。内戦終結と移行措置を定めた合意が、その後の自治移行と独立プロセスを進め、南スーダン成立へつながっていった。

出典: Photo by United States Department of State / Wikimedia Commons Public domainより


南スーダンの歴史を語るには、まずスーダン(北部)との関係を知る必要があります。スーダンはかつてアラブ系ムスリムが多い北部と、アフリカ系キリスト教・伝統宗教が多い南部で大きく分かれていました。その結果、宗教・民族・資源・政治の対立が深まり、1955年から内戦が勃発。最終的に20年以上にわたる第二次スーダン内戦(1983〜2005)で200万人以上が命を落としました。


2005年に包括和平合意(CPA)が結ばれ、2011年に住民投票によって正式に独立。こうして世界で最も新しい国家・南スーダンが誕生しました。


でも、残念ながらその後も平和は続かず、2013年には政権内対立から内戦が再燃。現在も和平プロセスは継続中ですが、安定とは言いがたい状況です。


どんな社会?

ジュバの市街地(南スーダンの首都)

南スーダンの首都“ジュバ”
白ナイル川沿いに広がる若い国の首都で、行政・経済の拠点が集まり、地方との交通や商業が交差する南スーダンの中枢都市。

出典: Photo by Umar sheriff habibullah / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より


南スーダンの社会は多民族・多言語・多宗教のモザイク構造。その中で、共同体や家族、伝統的な儀礼や音楽が、分断を超えて人々をつなぐ土台になっています。国家としての歴史は浅くとも、村や部族を基盤にしたつながりが、日々の暮らしをしっかりと支えている──そんな印象を受けます。


政治|独立の希望と続く不安定さ

2011年にスーダンから独立したばかりの世界で最も若い国ですが、その後は内戦や政治対立が続き、現在も暫定政府による統治が行われています。和平合意は結ばれたものの、武装勢力の活動や地域対立が完全に収まっているわけではなく、政治的な不安定さが課題です。一方で、市民社会や国際的な和平支援への期待も根強くあります。


経済|豊かな資源と届かない恩恵

石油資源が経済の中心ですが、その利益は政治的対立や汚職によって十分に国民に還元されていません。農村部ではトウモロコシやキャッサバ、家畜を中心に自給的な農業が営まれていますが、インフラや市場へのアクセスの不備が大きな課題。気候変動による干ばつや洪水も、人々の暮らしに深刻な影響を与えています。


宗教|共存の伝統と緊張のはざまで

キリスト教徒と伝統宗教の信者が多数を占めますが、イスラム教徒も一定数存在し、多宗教社会としての歴史があります。長年、宗教間の共存が営まれてきた一方で、政治的・民族的な対立が宗教的な緊張を生む場面もあり、寛容の文化が試されている局面にあります。


言語|統一を模索する多言語国家

公用語は英語ですが、実際の生活ではディンカ語、ヌエル語、バリ語など、多数の民族語が日常的に使われています。共通語の整備は課題でありながら、言葉を超えた儀礼や音楽、挨拶の文化が、人々の間に独自のコミュニケーションの形を育んでいます。



どんな文化?

トポサの伝統衣装(南スーダン)

南スーダンのトポサ族の伝統衣装
ビーズ飾りや革の装身具を重ねる装いで、地域ごとの模様や素材選びに共同体の文化が映る。

出典: 『Toposa_Woman_South_Sudan_030』- Photo by Steve Evans / Wikimedia Commons CC BY 2.0より


南スーダンの文化は、とにかく“リズム”と“儀式”が生きている。多様な民族が持つ太鼓や踊りの伝統は、ただの娯楽ではなく、歴史・信仰・社会の記憶を伝える手段なんです。口承文化が中心で、年長者や語り部によって、物語や知恵が次世代へと受け継がれています。音楽はその中核にあり、共同体の絆を深める力を持っているんです。


美術|身体と自然が語る芸術のかたち

南スーダンの美術は日常と密接に結びついた表現が多く、特に身体装飾(身体ペイントやビーズ細工)は、民族アイデンティティや通過儀礼の象徴として重要です。たとえばヌエル族やムルレ族の顔の傷跡(スカーフィケーション)は、単なる装飾ではなく誇りと意味を宿した文化表現です。近年は紛争や難民体験をテーマにした現代アートにも注目が集まり、アートを通じた癒しや対話の場としての可能性も広がっています。


スポーツ|荒地に輝くバスケットボールの夢

バスケットボールが特に人気で、南スーダン出身のNBA選手たちは若者たちのロールモデル。代表チームは急成長を遂げており、国際大会でも存在感を増しています。国内では設備の整備が遅れているものの、空き地や土のコートでの即席ゲームが盛んで、スポーツが希望の象徴となっています。サッカーもまた地域社会の重要な活動として親しまれています。


食事|シンプルで力強い命のごはん

主食はソルガムやトウモロコシの粉を練った団子(アセイダやキスラ)。これに豆や野菜、時には山羊や魚のシチューを添えて食べます。手で食べるスタイルが基本で、家族や隣人と大皿を囲むことで、共同体のつながりが深まる文化が今も息づいています。季節や民族によって味付けや具材が変わるのも、地域文化の豊かさを物語っています。


建築|自然と共に生きる暮らしの知恵

南スーダンの建築は、自然素材を活かした持続可能な工夫にあふれています。伝統的な家屋「トゥクル(Tukul)」は、円形の壁ととがった草葺き屋根が特徴で、暑さをしのぎ、雨を弾く設計が実に合理的。都市部では現代建築も増えていますが、村落では今なお伝統建築が主流です。建物は単なる住まいではなく、家族や一族の歴史を映す空間でもあるんです。



どんな地理?

スッド湿地帯での漁の様子(南スーダン)

スッド湿地帯での漁の様子
白ナイル川がつくる巨大湿地のスッドでは、水草の島々と水路が季節で姿を変え、漁や移動手段など人びとの暮らしに影響を与える。

出典:『Fishing_in_Sudd_wetland_-_by_CPWF_Basin_Focal_Project』- Photo by Karen Conniff / Wikimedia Commons CC BY 2.0より


南スーダンはアフリカ東部の内陸国で、国土は日本の約1.7倍。国としての歴史はまだ浅いものの、白ナイル川を中心に湿地、草原、山岳地帯が広がっていて、自然の多様さとスケール感に驚かされます。季節によって大地が水に覆われる地域もあり、人々の暮らしは自然のリズムと深く結びついているんです。


地形|川と湿地がつくる生命の大地

国土の中央を白ナイル川が縦断し、その流域には世界最大級の湿地「スッド湿地帯」が広がっています。この湿地は水鳥や魚、植物の宝庫で、地域の生態系と人々の生計を支える大切な存在。東部には高原地帯や丘陵もあり、平原と山地のコントラストも見どころです。


気候|恵みと試練をもたらす二つの季節

熱帯サバナ気候に属し、雨季(5〜10月)と乾季が明確に分かれています。雨季には川が氾濫し、大地が湖のようになる地域も。一方で、乾季には水不足と干ばつに悩まされることもあり、気候変動の影響は深刻化しています。農業や牧畜の持続性にとって、大きな課題でもあります。


自然|湿地と野生動物が息づくフロンティア

南スーダンには、ゾウ、キリン、アンテロープ、クロコダイルなど多様な野生動物が生息しています。特にスッド湿地は渡り鳥の楽園で、生物多様性のホットスポットとして知られています。かつての内戦で保護活動が中断された時期もありましたが、現在は自然保護と観光資源の再生に向けた取り組みが少しずつ進んでいます。


南スーダンは、争いの歴史とともに「独立という夢」を実現した国。その歩みはまだ不安定だけど、そこに生きる人々の希望と努力は、確かに未来へ向かっています。「世界でいちばん若い国」のこれからを、もっと知って、見守っていきたいですね。