アフリカで特に有名な民族10選

アフリカの有名民族

アフリカにはマサイ族、ズールー族、ヨルバ族など世界的に知られる民族が存在します。それぞれ独自の言語や文化、伝統的な社会構造を持っています。本ページでは、東アフリカや西アフリカの民族分布と文化的背景を理解する上で重要なこのテーマについて、より深く探っていこうと思います。

アフリカで特に有名な民族10選

アフリカは「多民族の大陸」と呼ばれるほど、実に3000以上の民族が存在していると言われています。


それぞれの民族が独自の言語、文化、暮らし方を持ち、ときには国境をまたいで広がっているのもアフリカらしい特徴。


ここではその中でも、とくに知名度が高い・文化的に重要・人口が多いといった理由から、注目されているアフリカの有名民族10選をご紹介します!



1. ズールー族(南アフリカ)

ズールー族の伝統舞踊(南アフリカ)

伝統舞踊を行うズールー族
跳躍やリズム打ちを特徴とする演舞で、ズールーの集落や祭礼の場面を象徴的に伝える。

出典:『Zulu dancers』-Photo by Hein Waschefort/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0


南アフリカ最大の民族。 19世紀にはシャカ・ズールーという英雄的指導者が強力な王国を築き、英軍とも戦いました。 今でも伝統的な衣装や踊りが観光資源として有名で、ズールー語は公用語のひとつにもなっています。


2. マサイ族(ケニア・タンザニア)

マサイ族の伝統舞踊(ケニア・マサイマラ)

伝統舞踊を行うマサイ族
跳躍を伴うアドゥム(adumu)で知られる演舞。集落の儀礼や観光の場でも披露され、隊列の掛け声と太鼓のリズムが高揚感を生む。

出典:『Maasai dance』-Photo by Ninaras/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0


長身で赤い衣装、ジャンプする踊りが印象的なマサイ族は、アフリカ観光の顔ともいえる存在。 牧畜を中心に暮らし、今も伝統的な半遊牧生活を守る人が多いです。 ライオン狩りの勇者伝説や、ビーズ細工などの文化でも知られています。


3. ハウサ族(ナイジェリア・ニジェール周辺)

落花生を売る露天商(ナイジェリア・カドゥナ州)

商いを行うハウサ族の女性
ナイジェリアの中北部カドゥナのローカル市場で落花生を売る女性。交易と手仕事が息づく暮らしの一場面。

出典:『Hausa woman』-Photo by Johnexx/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0


西アフリカで最も人口の多い民族のひとつ。 主にイスラム教を信仰し、都市化も進んでおり、政治・経済に強い影響力を持っています。 ハウサ語は数千万人が話す共通語として、西アフリカ全体で広く使われています。



4. ヨルバ族(ナイジェリア南西部)

エグングンの仮面舞踏(ヨルバの伝統)

仮面舞踏を行うヨルバ族
祖先を讃える祭礼で、色布を重ねた装束をまとった舞手が踊りながら集落を巡る、ヨルバの伝統的な行事。

出典:『Benin- Egungun masquerade』-Photo by Ahmzzywilmakeit/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0


芸術と都市文化に長けた民族。 歴史的にはイフェやオヨといった古代王国を築き、独自の宗教や神話体系(オリシャ信仰)を持っています。 ブラジルやキューバなどのアフリカ系文化にも深く影響を与えた民族です。


5. イボ族(ナイジェリア東部)

イボ族の仮面舞踏(ンマンウ)

仮面舞踏を行うイボ族
祖霊を称える祭礼で舞われる伝統の仮面芸能で、色鮮やかな装束と面で集落を練り歩く。

出典:『Mmanwu ndi Igbo』-Photo by Nwonwu Uchechukwu P/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0


商才にたけた民族として有名。 英国植民地時代から教育水準が高く、経済活動に活発に関わってきました。 1960年代にはビアフラ戦争(イボ独立運動)が起きた歴史もあり、今も政治的なアイデンティティを強く持っています。


6. ベルベル人(北アフリカ:モロッコ、アルジェリアなど)

アヒドゥスの集団舞踊(モロッコのベルベル人)

集団舞踊を行うベルベル人
男女が肩を並べて輪や二列を作り、太鼓と詩歌に合わせて踏み鳴らすモロッコのベルベル人の伝統芸能。

出典:『Moroocan AHIDUS』-Photo by Farid AShraf/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0


アラブ化される以前から北アフリカに住んでいた先住民族。 現在も山岳地帯や砂漠周辺に多く暮らしており、独自の言語(タマジグト)や伝統衣装を守っています。 チュニジアやリビアでも存在感が強く、文化復興運動も盛んです。


なお「ベルベル人」という呼び方は、もともとローマ人が“異民族”を指す言葉として使った蔑称に由来するため、現在では「アマジグ人(Amazigh)」という自称が尊重されることも多いです。


7. ツワナ族(ボツワナ)

ツワナ族の伝統舞踊(南アフリカ・キンバリー)

伝統舞踊を行うツワナ族
太鼓のリズムに合わせて隊列で踏み鳴らす演舞で、祭礼やイベントで受け継がれてきたツワナの文化表現。

出典:『Tswana Dancers 3』-Photo by Andrew Hall/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0


ボツワナ最大の民族で、同国の政治・経済の中心を担っています。 ツワナ語は南アフリカやナミビアにも広がっていて、農耕と牧畜を融合させた生活文化が特徴です。


8. アムハラ族(エチオピア)

アムハラのコーヒーセレモニー(アンコベール)

コーヒー儀礼を行うアムハラ女性
焙煎から抽出、振る舞いまでを行う伝統儀礼で、香木の薫香や豆の香りを楽しみながら客人をもてなす。

出典:『Bunna3 - Coffee ceremony』-Photo by Jean Rebiffe/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0


エチオピアの歴史を語るうえで欠かせない民族。
かつてのアビシニア帝国の中心であり、アムハラ語は今も公用語。 エチオピア正教の信仰、王政の伝統、独特の暦や文字など、独自文明を持つ稀有な民族です。


9. トゥアレグ族(サハラ砂漠一帯)

タゲルムストをまとうトゥアレグの男性たち(マリ)

タゲルムストをまとうトゥアレグの男性
インディゴ染めの頭布タゲルムストを巻き、砂漠の祭で集う場面。顔と頭を覆う装いは砂塵や日差しを避ける知恵として受け継がれてきた。

出典:『Touaregs at the Festival au Desert near Timbuktu, Mali 2012』-Photo by Alfred Weidinger / Wikimedia Commons CC BY 2.0


「青の民」とも呼ばれる、サハラ砂漠の遊牧民。 顔を覆うインディゴブルーのターバンが有名です。 現在はマリ、ニジェール、アルジェリアなどにまたがって住んでおり、独立運動や文化アイデンティティの強さでも知られています。


10. バンバラ族(マリ共和国)

マリ・ナファディエの村祭りでのジェンベ合奏

ジェンベ合奏を行うバンバラ族
マリのバマコ北西の集落で、コンコニと2台のジェンベが加わる合奏の場面

出典:『Mali village dance』-Photo by Michi Henning/Wikimedia Commons CC0 1.0


マリ最大の民族で、言語はバンバラ語。西アフリカの共通語的な役割もあります。 農業や伝統音楽が盛んで、ジェンベ(太鼓)文化でも有名。 「音楽と語りの民族」ともいわれ、グリオ(語り部)文化が今も息づいています。


アフリカには、見た目や言葉、暮らし方、歴史背景がまったく違う民族がこんなにもたくさん共存しているんですね。それぞれが大切にしている価値観や文化は、アフリカの“豊かさ”そのもの。ひとつの大陸に、無数の世界がある──そんな多層的な面白さが、アフリカの魅力なんです。