

アフリカは「野生動物の宝庫」と呼ばれるほど、豊かな生態系と多様な種に恵まれています。でも今、その命の輝きが静かに消えかけているのを、知っていますか?
密猟、気候変動、生息地の破壊──私たち人間の行動が、多くの動物たちを“絶滅危惧種”に追い込んでしまっているんです。
ここでは、アフリカ大陸で絶滅の危機にある代表的な野生動物たちを8種紹介しながら、彼らを取り巻く状況や脅威について、やさしく見ていきましょう。
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アフリカゾウ
サバンナに生きる最大級の陸生哺乳類で、群れで行動し、大きな耳と長い鼻で採食や体温調節をこなす。
出典:『African elephant (Loxodonta africana)』-Photo by Charles J. Sharp/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
分類:森林ゾウ=「絶滅危惧IA類」、サバンナゾウ=「絶滅危惧IB類」
象牙目的の密猟が最も大きな原因です。高値で取引される象牙を狙って、今もなお多くのゾウが命を落としています。特に大きな牙を持つオスは狙われやすく、個体数のバランスにも影響が出ているんです。
さらに、農地拡大による生息地の分断も深刻で、人間と象の“縄張り争い”も起きています。ゾウが食べものや水を探して人間の生活圏に入り込み、畑を荒らすことで衝突が増えている状況。もともとゾウが暮らしていた場所が奪われているという視点も、忘れてはいけませんね。共存のためには、ゾウの通り道(コリドー)を確保するような工夫も必要です。

クロサイの雌(ナミビア・エトーシャ国立公園)
低木の葉を主に食べるブラウザーで、尖った上唇が特徴
出典:『South-western black rhinoceros (Diceros bicornis occidentalis) female』-Photo by Charles J. Sharp/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
サイの角が「薬になる」と誤って信じられ、アジア方面で高値で取引されるため、国際的な密猟ネットワークが後を絶ちません。角は実は爪や髪と同じケラチンでできていて、医学的な効果はありませんが、一部では今も「万能薬」や「富の象徴」として珍重されているんです。
保護のために、現地ではパトロールを強化したり、あえて角を切って狙われにくくする取り組みも行われています。それでも密猟者の手口は年々巧妙になっていて、油断できません。サイを守るには、現地の努力だけでなく、需要そのものを減らすことが本当に大事なんです。

リカオン(アフリカ野犬)
群れで協調して狩りをする社会性の高い捕食者で、不規則な斑模様と大きな丸い耳が目印。
出典:『African wild dog (Lycaon pictus pictus)』-Photo by Charles J. Sharp/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
生息地の分断で群れが維持しにくくなり、広い範囲を移動しながら狩りを行うリカオンにとっては大きなダメージになっています。道路や農地によって行動範囲がバラバラに分かれてしまい、本来なら協力して獲物を追い詰めるはずの仲間同士が、物理的に離れ離れになってしまうんですね。
さらに狂犬病やジステンパーなどの病気が、家畜や野良犬から感染するケースも問題です。特にジステンパーは、リカオンにとっては致命的で、群れ全体が一気に崩壊することも。つまり、人間の生活圏の広がりが、病気のリスクまでリカオンに背負わせてしまっているわけです。予防接種や家畜の管理を通じて、野生動物との距離を保つことも大切ですね。

マウンテンゴリラの採食
東アフリカの高地林にすむ大型類人猿で、群れで行動し植物中心の食性をもつ。ブウィンディ原生国立公園は現存個体の半数以上が暮らす保護地として知られる。
出典:『Mountain gorilla (Gorilla beringei beringei) eating』-Photo by Charles J. Sharp/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
密猟、生息地の農地化、観光客からの感染症など、複数の要因が重なって絶滅危惧種に指定されています。かつては「伝説の生き物」なんて言われたこともありましたが、今も約1,000頭しか残っていないと言われていて、本当にギリギリの状態なんです。
密猟ではゴリラそのものを狙うというより、罠にかかってしまうケースも多く、意図せず命を落とすことも。一方で、生息地がどんどん農地化されていくせいで、居場所が狭まりストレスや食料不足も深刻に。
そして意外と見落とされがちなのが観光客からの感染症。ゴリラは人間に遺伝的に近いため、風邪やインフルエンザでも命取りになることがあるんですよ。つまり、人間の「善意」や好奇心さえも、彼らの命を脅かすリスクになってしまうことがあるんです。ルールを守った観察や距離の取り方が、彼らの未来を守るカギになります。

サハラチーター(アルジェリア・イドレス)
砂漠とサヘルに適応した体色と薄い斑点が特徴で、個体数はごく少ない絶滅危惧のチーター。
出典:『Acinonyx jubatus ssp. hecki in Idles 2』-Photo by Karim Haddad/Wikimedia Commons CC BY 4.0より
食料となる動物が減っている上に、生息地がどんどん人間に奪われています。もともと過酷な砂漠環境で暮らしているチーターなので、狩り自体が難しいんですが、獲物がいなくなれば生きていけないのは当然のこと。ヤギや家畜を襲ったことで報復される例もあって、ますます肩身が狭くなっています。
さらに、広大なエリアを必要とする彼らにとって、生息地が分断されてしまうのは致命的。特にサハラチーターは個体数がごく少なく、数十頭しか確認されていないとも言われています。孤立した環境では出会いのチャンスも少なくなり、繁殖そのものが難しくなってしまうんです。砂漠に生きる“幻のチーター”を未来に残すには、環境そのものをどう守るかが問われています。

キリン(クルーガー国立公園)
南アフリカのクルーガー国立公園で撮影された個体。高木の葉を主食とし、長い首と脚でサバンナに適応している。
出典:『Giraffa giraffa 1』-Photo by Franz Xaver/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より
森林伐採や農地拡大で住む場所が減少しています。かつてはアフリカ全土の草原に広く分布していたキリンですが、今ではその数が目に見えて減ってきているんです。静かに、でも確実に…。遠くから見ると穏やかでのんびりしていそうなキリンですが、実はとっても繊細な動物で、生息地が少し変わるだけでも暮らしにくくなってしまうんですよ。
加えて、気候変動や密猟の影響も無視できません。干ばつで木が枯れれば、キリンの主食である葉っぱも減ってしまうし、皮や肉を目的に狙われることもあるんです。「目立つけど、あまり注目されない」そんなキリンの現状に、もっと目を向けていく必要があります。守るためには、ただ保護区を作るだけでなく、人間の暮らしとのバランスも考える必要がありそうです。
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アフリカペンギン(南アフリカ・ボルダーズビーチ)
ケープ沿岸に営巣する温帯のペンギンで、岩浜のコロニーに集まり砂地や灌木下に巣をつくる。胸の黒帯と鳴き声が特徴で、観光地の保護区で間近に見られる。
出典:『African penguins』-Photo by Salimfadhley/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0より
ケープペンギンとも呼ばれるこのペンギンは、アフリカ南部の海岸に生息するちょっと珍しい存在。けれど今、その数は急激に減っていて、絶滅の危機に直面しています。漁業でエサの魚が減ったことが大きな原因のひとつ。イワシやアジといった小魚が獲られすぎて、ペンギンたちが十分に食べられなくなっているんです。
さらに油の流出事故で羽が汚れたり、海水温の変化で魚の群れが移動してしまうなど、環境変化も追い打ちをかけています。海に生きるはずのペンギンが、海によって生きづらくなっているという矛盾した現実。今では人工巣の設置や保護区の整備など、人の手で未来をつなごうという試みも進められています。

ブッシュマンウサギ(リバリンラビット)
南アフリカの乾燥した河川沿いの低木帯にすむ希少なウサギで、目の白い輪と頬の暗色帯が特徴。夜行性で主に低木の葉を食べ、生息地改変と低い繁殖率が存続の課題。
出典:『Bunolagus monticularis』-Photo by Owen Davies/Wikimedia Commons CC0 1.0より
農地の拡大、狩猟、川沿いの環境破壊によって、生息地が激減しています。このウサギ、実は南アフリカのごく限られた地域にしかいない“超レア”な存在。もともと夜行性でとてもおとなしい性格なので、自然の中でその姿を見かけるのは本当に奇跡に近いんです。
特に問題なのが、湿地や川沿いの草地など、彼らが好む環境がどんどん壊されていること。農地に変わってしまったり、水が汚れたりして、食べものや隠れ場所がなくなってしまうんですね。数が少なすぎて、どこにどれだけ生き残っているのかもよくわかっていない、そんなレベルなんです。地味だけど、大事な命。守るためにはまず知ることが第一歩です。
アフリカの野生動物たちは、ただ“かわいい”“かっこいい”存在ではなく、そこに暮らす自然や人々、そしてわたしたちの未来と深くつながっています。絶滅危惧種の保護は、アフリカの豊かな命を守ることだけでなく、人間社会が“どう自然と共に生きていくか”を問いかけているんですね。まずは知ることから、その命に寄り添う一歩を始めてみませんか?
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